手持ちのPCでゲーム配信を始める方法:性能チェックとOBS最適化設定
手持ちのPCでゲーム配信を始めるには
ゲーム配信を始めるにあたり、多くの方が「ゲーミングPCが必要なのではないか」と考えるかもしれません。確かに高性能なゲーミングPCがあればより快適な配信環境を構築できますが、必ずしも必須というわけではありません。現在お手持ちのPCでも、いくつかの確認と設定を行うことでゲーム配信を始めることは十分に可能です。
この記事では、お手持ちのPCでゲーム配信を始めるための第一歩として、PCの性能を確認する方法と、配信ソフトウェアであるOBS Studioで快適に配信するための最適化設定について詳しく解説します。ご自身のPCでどこまでできるのか、どのような点に注意すれば良いのかを把握し、スムーズに配信スタートを切るための一助となれば幸いです。
1. お手持ちのPCで配信が可能か判断する
まず、現在お使いのPCがゲーム配信に必要な最低限の性能を満たしているかを確認します。ゲーム配信では、ゲームをプレイする処理に加え、ゲーム画面をキャプチャーし、エンコード(圧縮)してインターネットに送信するという複数の処理が同時に行われます。このため、ある程度のPC性能が求められます。
1-1. ゲームと配信ソフトの要求スペックを確認する
配信したいゲームと使用する配信ソフトウェア(ここではOBS Studioを想定)がそれぞれ推奨するスペックを確認します。特にゲームの要求スペックは重要で、ゲーム自体が快適に動作しないPCでは、配信と両立させることは困難です。
- ゲームの要求スペック: ゲームの公式サイトや販売ページに記載されています。「最小要件」と「推奨要件」がありますが、配信を考慮すると「推奨要件」に近い性能があると望ましいです。
- OBS Studioの要求スペック: OBS Studioの公式サイトに記載されています。一般的に、Windows 10以降、DirectX 11互換GPU、IntelまたはAMDのモダンなCPUが推奨されます。
1-2. ご自身のPCスペックを確認する
お手持ちのPCがこれらの要求を満たしているかを確認します。Windowsの場合、以下の手順で主要なスペックを確認できます。
- Windowsの検索バーに「dxdiag」と入力し、「DirectX 診断ツール」を起動します。
- 「システム」タブで、プロセッサ(CPU)とメモリ(RAM)の情報を確認します。
- 「ディスプレイ」タブ(複数ある場合は確認したいディスプレイを選択)で、名前(GPU)と搭載メモリの情報を確認します。
これらの情報と、確認したゲームおよびOBS Studioの要求スペックを比較検討します。特にCPUとGPUの性能が配信の可否に大きく影響します。内蔵グラフィック(CPUに統合されたGPU)の場合、高性能なディスクリートGPUに比べて負荷が高くなりやすい傾向があります。
2. 性能が不足している場合のサインと対処
PC性能が不足している場合、配信中に以下のような問題が発生しやすくなります。
- 配信映像がカクつく、コマ落ちが多い
- ゲームの動作が重くなる、フレームレートが低下する
- 音声が途切れる、ノイズが入る
- OBS Studioが不安定になる、クラッシュする
これらの問題が発生する場合、以下の対処法を試すことができます。
- OBS Studioの設定を見直す: 後述の最適化設定を適用します。これが最も効果的なことが多いです。
- ゲーム側の設定を下げる: ゲーム内のグラフィック設定(解像度、画質、エフェクトなど)を下げ、ゲーム自体の負荷を減らします。
- 不要なアプリケーションを終了する: 配信中に関係のないソフトウェアやバックグラウンドで動作しているプロセスを終了し、PCのリソースを解放します。
- Windowsの設定を見直す: ゲームモードを有効にする、バックグラウンドアプリの実行を制限するなど。
- ネットワーク環境を確認する: PC性能だけでなく、インターネット回線が不安定な場合も配信がカクつく原因となります。「ゲーム配信に必要な回線速度の目安と確認方法」の記事も参考にしてください。
ハードウェア自体が根本的に不足している場合は、設定変更だけでは限界があることを理解しておく必要があります。
3. 手持ちPC向けOBS Studio最適化設定
お手持ちのPCの性能を最大限に活用し、より安定した配信を行うために、OBS Studioの以下の設定項目を最適化します。
3-1. 出力設定
「設定」>「出力」タブを開きます。出力モードを「詳細」にすると、より詳細な設定が可能です。
- エンコーダー: 配信映像の圧縮方式を選択します。PCのGPUにハードウェアエンコーダー(NVIDIA NVENC、AMD VCE/AMF、Intel Quick Sync Videoなど)が搭載されている場合、ソフトウェアエンコーダー(x264)よりもPCへの負荷を大幅に軽減できます。可能な限りハードウェアエンコーダーを選択することを推奨します。
- 例: NVENC (新しい), QuickSync (H.264) など
- レート制御: 配信ビットレートの制御方法です。一般的には「CBR」(固定ビットレート)が推奨されます。
- ビットレート: 1秒間に送信するデータ量です。値が高いほど高画質になりますが、必要な回線速度も上がり、PCのエンコード負荷も増えます。PCや回線性能に合わせて適切な値を設定します。一般的な目安としては、720p/30fpsで2000-3000kbps、1080p/60fpsで4000-6000kbpsですが、PC性能が低い場合はこれより低い値から試すのが良いでしょう。
- キーフレーム間隔: 通常は「2秒」に設定します。
- プリセット/エンコーダー設定: エンコーダーの品質と速度のバランスを調整します。性能が低いPCの場合は、「Performance」や「Veryfast」など、速度優先の設定を選択することで負荷を軽減できます。品質は低下しますが、安定性を優先します。
- プロファイル: HighまたはMainを選択します。
3-2. 映像設定
「設定」>「映像」タブを開きます。
- 基本(キャンバス)解像度: OBSの内部でシーンを作成する際の解像度です。ディスプレイの解像度と同じか、配信したいゲームの解像度と同じにすることが多いです。
- 出力(スケーリング)解像度: 実際に配信される映像の解像度です。PC性能が低い場合、基本解像度よりも低い解像度(例: 1920x1080を1280x720に縮小)を選択することで、エンコード負荷を軽減できます。
- 縮小フィルタ: 解像度を縮小する際に使用されるフィルタです。負荷の低い順に「バイキュービック」「ランチョス」などがあります。PC性能に合わせて選択します。一般的には「Lanczos」が推奨されますが、負荷が高い場合は「Bicubic」を試してください。
- FPS 共通値: 1秒間のフレーム数です。通常30 FPSまたは60 FPSを選択します。PC性能が低い場合は30 FPSを選択することで負荷を軽減できます。
3-3. 詳細設定
「設定」>「詳細」タブを開きます。
- 一般 - プロセス優先度: OBS StudioにどれだけPCのリソースを割り当てるかを設定します。「通常以上」や「高」に設定することで、OBS Studioの処理が優先され安定しやすくなりますが、ゲーム側の動作が重くなる可能性があります。PC性能と相談して調整します。
4. 配信中のPC負荷をさらに軽減する方法
OBS Studioの設定だけでなく、PC全体の負荷を軽減する工夫も重要です。
- ゲーム側の設定: 前述の通り、ゲーム内のグラフィック設定を下げることが効果的です。
- Windowsのゲームモード: Windows 10/11にはゲームモードが搭載されています。ゲームモードを有効にすると、ゲームプレイ中のWindows Updateや通知が抑制され、ゲームにリソースが優先的に割り当てられます。
- バックグラウンドアプリの停止: 設定からバックグラウンドで実行されるアプリを制限したり、タスクマネージャーで不要なプロセスを終了したりします。
- デスクトップの表示設定: 配信中にデスクトップの不要なアニメーションや透過効果などを無効にすることで、わずかに負荷を軽減できる場合があります。
5. テスト配信の実施
これらの設定変更を行った後は、必ず実際の配信環境に近い状態でテスト配信を行ってください。誰も見ていない状態(限定公開など)で配信を行い、自身のPCで視聴して映像や音声に問題がないか、PCの動作が不安定にならないかなどを確認します。問題が見つかった場合は、設定を再度調整します。
まとめ
ゲーミングPCを持っていなくても、お手持ちのPCの性能を確認し、OBS Studioの設定を適切に最適化することでゲーム配信を始めることは十分に可能です。CPUやGPUのスペックを確認し、ゲームと配信ソフトの要求スペックと比較することから始め、OBS Studioの出力設定(特にエンコーダーとビットレート)、映像設定(解像度とFPS)、詳細設定などをPC性能に合わせて調整してください。
それでも安定しない場合は、ゲーム側の設定を下げる、不要なアプリを終了するなど、PC全体の負荷を軽減する対策を併用します。最終的にはテスト配信で実際の動作を確認することが不可欠です。
お手持ちのPCの性能には限界がありますが、これらのステップを踏むことで、まずはゲーム配信を始めてみるという目標は十分に達成できるはずです。そこから得られる経験を元に、より快適な配信環境を目指していくことも可能です。