ゲーム配信向けゲーム設定の基本:快適な配信のための調整ガイド
ゲーム配信を開始するにあたり、PCのスペックやOBS Studioなどの配信ソフトウェアの設定が重要であることは広く知られています。しかし、実は配信するゲームそのものの設定も、快適な配信を実現するために非常に重要な要素となります。
ゲーム側の設定を適切に調整することで、PCへの負荷を軽減し、フレームレートの低下を防ぎ、安定した配信品質を保つことができます。この記事では、ゲーム配信を行う上で考慮すべきゲーム内設定の基本とその調整方法について解説します。
なぜゲーム内の設定調整が重要なのか
ゲーム配信では、ゲームをプレイするだけでなく、その映像と音声をキャプチャし、エンコードしてインターネット経由で送信するという複数の処理が同時に行われます。これらの処理は、PCのCPU、GPU、メモリといったリソースを消費します。
ゲームの設定が高すぎると、ゲーム自体が必要とするリソースが増大し、配信処理に割り当てられるリソースが不足することがあります。これにより、ゲームのフレームレートが低下したり、配信映像がカクついたり、最悪の場合は配信が停止したりといった問題が発生する可能性があります。
特に、仕事でPCを使用する機会はあっても、専門的なPC知識に不安があるという方もいらっしゃるかと思います。難しい専門用語は避け、ゲームの設定をどのように考え、調整すれば快適な配信につながるのか、その基本的な考え方と具体的な設定項目について見ていきましょう。
快適な配信のためのゲーム設定項目と調整の考え方
ゲームのグラフィック設定には非常に多くの項目がありますが、特にPCへの負荷に大きく影響し、配信品質に関わる主要な項目とその調整の考え方について説明します。
解像度 (Resolution)
解像度は、画面に表示されるピクセルの細かさを示す設定です。一般的に「1920x1080 (フルHD)」や「2560x1440 (WQHD)」といった数値で表されます。解像度が高いほど映像は精細になりますが、その分PC(特にGPU)への負荷が大幅に増加します。
- 調整の考え方: 配信サイトで推奨される配信解像度(例えば1920x1080や1280x720)を基準に考えます。PCのスペックに自信がない場合や、より安定した配信を優先したい場合は、ゲーム内の解像度を配信解像度と同じか、あるいは一段階下げることを検討してください。例えば、配信を1080pで行う場合でも、ゲーム内の解像度を1080pから720pに下げることで、PC負荷を大きく軽減できることがあります。OBS側で配信解像度に合わせてスケーリング表示することが可能です。
グラフィック品質プリセット (Graphics Quality Preset)
多くのゲームには、「低」「中」「高」「最高」といったグラフィック品質のプリセット設定が用意されています。このプリセットは、テクスチャの質、影の細かさ、パーティクルエフェクト、描画距離など、様々な個別のグラフィック設定を一括で調整するものです。
- 調整の考え方: まずは「中」や「高」といった設定から試してみて、PCのパフォーマンス(ゲーム内のフレームレートや配信ソフトウェアのエンコード負荷)を確認するのが良いでしょう。配信中にPCのリソース使用率が高くなりすぎる場合は、プリセットを下げることを検討してください。「最高」設定は最もPC負荷が高いため、PCスペックに十分な余裕がない限り、避けた方が無難です。
フレームレート (Frame Rate / FPS)
フレームレートは、1秒間に画面が更新される回数を示します。数値が大きいほど映像は滑らかになります。ゲーム内で「60fps」や「120fps」といった上限を設定できる場合があります。
- 調整の考え方: 配信サイトの多くは60fps配信に対応しています。ゲーム内のフレームレートは、PCのモニターのリフレッシュレート(例えば60Hzや144Hz)や配信フレームレート(60fps)に合わせて設定することが一般的です。PC負荷を考慮する場合、ゲーム内フレームレートの上限を配信フレームレート(例: 60fps)に設定することで、無駄な処理を防ぎ、PCリソースを配信に回す余裕を作ることができます。ただし、モニターのリフレッシュレートよりも極端に低い設定にすると、ゲームプレイの快適性が損なわれる場合もあります。
VSync (垂直同期)
VSyncは、ゲームのフレームレートをモニターのリフレッシュレートに同期させる設定です。これにより、画面の描画途中で次のフレームの描画が始まってしまうことによる「ティアリング」と呼ばれる横線が入る現象を防ぐ効果があります。
- 調整の考え方: VSyncを有効にするとティアリングは防げますが、入力遅延が増加したり、フレームレートが不安定になったりする場合があります。配信の安定性を優先する場合や、PC負荷を少しでも抑えたい場合は、オフにすることを検討するのも一つです。ただし、ティアリングが気になる場合は有効にしてください。代替として、ゲーム内やグラフィックドライバの設定で「適応的な垂直同期」や「高速同期」といった機能が提供されている場合もあります。
その他のグラフィック設定
- テクスチャ品質 (Texture Quality): ゲーム内のオブジェクトの質感を決定します。VRAM(ビデオメモリ)の消費に大きく影響します。VRAM容量が少ないGPUを使用している場合は、「中」や「低」に設定することで負荷を軽減できます。
- 影の品質 (Shadow Quality): 影の精細さや描画距離を決定します。PC負荷が高い項目の一つです。設定を下げることでパフォーマンスが向上しやすい傾向があります。
- アンチエイリアシング (Anti-Aliasing): オブジェクトの輪郭のギザギザを滑らかにする処理です。品質設定が高いほど負荷が増加します。
- 描画距離 (View Distance): 遠景オブジェクトの描画範囲と詳細度を決定します。広範囲を描画するほど負荷が増加します。
ゲームプレイの快適性に関わる設定
配信品質だけでなく、配信者自身のゲームプレイの快適性も重要です。以下の設定は、直接的なPC負荷への影響は小さい場合が多いですが、配信画面の見え方や操作性に影響します。
- 視野角 (FOV - Field of View): 一度に表示されるゲーム内の範囲です。FPSやTPSなどで設定できます。視野角を広げると多くの情報が得られますが、画面端が歪んで見えたり、PC負荷がわずかに増加したりする場合があります。配信画面でどのように見えるかも考慮して調整してください。
- モーションブラー (Motion Blur): 画面が速く動いた際に意図的にブレを加えて滑らかに見せる効果です。人によっては酔いの原因になったり、配信映像が不鮮明に見えたりすることがあります。配信者や視聴者の好みに合わせてオンオフを検討してください。
- UIサイズ/表示 (UI Scale/Display): ゲームのユーザーインターフェース(体力バー、マップなど)のサイズや表示設定です。小さすぎると視聴者が見づらくなる可能性があります。
OBS Studioとの連携におけるゲーム設定
OBS Studioでゲーム画面をキャプチャする際の設定も、ゲーム側の設定と関連します。
- フルスクリーンとウィンドウモード: OBSの「ゲームキャプチャ」ソースは、フルスクリーンモードで動作するゲームを最も安定してキャプチャできます。ゲームによっては、ボーダーレスウィンドウモードでもゲームキャプチャで認識できる場合があります。ウィンドウモードの場合、「ウィンドウキャプチャ」ソースを使用することも可能ですが、ゲームキャプチャの方がパフォーマンスが良い傾向があります。ゲームを始める前に、どの表示モードでOBSが安定してキャプチャできるか確認しておくと良いでしょう。ゲームキャプチャが認識しない場合は、ゲームをフルスクリーンモードで起動し直したり、OBSを管理者として実行したりといった対処法があります。
設定調整のステップと確認方法
- PCスペックと目標配信設定の把握: 使用しているPCのCPUやGPUの性能、目標とする配信解像度とフレームレート(例: 1080p/60fps)を確認します。
- ゲームの推奨・必要動作環境を確認: プレイしたいゲームの公式サイトなどで公開されている動作環境を確認し、自身のPCスペックと比較します。
- 初期設定: まずはゲーム内のグラフィック品質プリセットを、推奨動作環境を満たしているなら「高」や「中」、不安がある場合は「低」に設定してみます。解像度は、配信解像度かそれ以下に設定します。
- テストプレイ: ゲームを起動し、様々なシーンでゲーム内のフレームレートが安定しているか確認します。カクつきが多い場合は、設定が高すぎる可能性があります。
- テスト配信: OBS Studioを起動し、ゲームキャプチャを設定します。実際に短い時間(10分程度)テスト配信を行ってみます。
- 配信状況の確認: OBS Studioのウィンドウ下部やステータスバーに表示されるCPU使用率、エンコード負荷(「エンコード遅延」などのメッセージ)、フレームレートなどを確認します。配信サイト側の配信インジケーターも確認します。
- 設定の調整:
- CPU使用率やエンコード負荷が高すぎる、またはゲーム内のフレームレートが不安定な場合は、ゲームの解像度を下げる、グラフィック品質プリセットを下げる、個別のグラフィック設定(影、テクスチャ、アンチエイリアシングなど)を下げる、ゲーム内フレームレートに上限を設定するといった調整を行います。
- 配信映像が意図した画質になっていない場合は、OBS側のビットレート設定などを確認しつつ、ゲーム内の解像度やテクスチャ品質などを調整してみます。
- 再テスト: 設定変更後、再度テストプレイやテスト配信を行い、効果を確認します。このプロセスを繰り返しながら、ゲームプレイと配信の両方が快適に行える最適な設定を見つけます。
まとめ
ゲーム配信におけるゲーム側の設定は、PCリソースの管理において非常に重要な役割を果たします。ゲーム内の解像度やグラフィック品質、フレームレートなどの設定を適切に調整することで、PCへの負荷を軽減し、安定した配信品質を維持することが可能になります。
全ての項目を「最高」に設定することが常に最善とは限りません。ご自身のPCスペックと相談し、目標とする配信品質、そして快適なゲームプレイとのバランスを取ることが肝要です。まずは基本的な設定項目から調整を始め、テストプレイやテスト配信を繰り返し行うことで、最適な設定を見つけ出してください。これらの調整を通じて、より快適で高品質なゲーム配信が実現できることと存じます。