ゲーム配信で視聴者を快適に!音量バランス調整とよくあるトラブル対策
ゲーム配信を始めるにあたり、機材の準備やOBS Studioの設定など、様々なステップがあります。その中でも、多くの配信者が最初に直面し、また視聴者の快適さに直結するのが「音量」に関する設定です。ゲーム音、ご自身のマイク音声、そしてBGM。これらの音量が適切にバランスされているかどうかは、配信の品質を大きく左右します。
適切な音量バランスが取れていないと、視聴者は「ゲーム音が大きすぎて声が聞こえない」「マイクのノイズが気になる」「BGMが邪魔になる」といった不満を感じてしまい、配信から離れてしまう原因にもなりかねません。しかし、どのように調整すれば良いのか、どのようなトラブルが起こりうるのか、初心者の方にとっては分かりにくい側面も多いでしょう。
この記事では、ゲーム配信における音量バランスの基本的な考え方から、OBS Studioを使った具体的な調整方法、そして初心者が陥りやすい音量トラブルとその対処法について、分かりやすく解説します。この記事をお読みいただくことで、視聴者にとって快適な、高品質なゲーム配信の音声環境を整えるための具体的な知識が得られるでしょう。
ゲーム配信における音量バランスの重要性
ゲーム配信では、主に以下の3種類の音が混ざり合って視聴者に届けられます。
- ゲーム音: 配信しているゲーム自体の音声です。ゲームプレイの状況を伝える上で最も重要な音の一つです。
- マイク音声: 配信者自身の声です。ゲームプレイの実況解説や視聴者とのコミュニケーションに使用します。
- BGM: 配信の雰囲気を盛り上げたり、間を持たせたりするために使用する背景音楽です。
これらの音量バランスが適切であることが、視聴者にとって快適な配信体験を提供するための鍵となります。一般的に、最も重要なのはマイク音声です。視聴者は配信者の声を聞きにきている側面が大きいため、マイク音声が埋もれないようにする必要があります。次に重要なのがゲーム音で、マイク音声の邪魔にならない範囲で、ゲームの臨場感や状況が伝わる音量にします。BGMはあくまで背景として、ゲーム音やマイク音声よりも小さい音量に設定するのが一般的です。
理想的なバランスとしては、マイク音声が最も大きく聞こえ、次にゲーム音、そしてBGMが最も小さく聞こえるように調整します。具体的な音量の目安としては、OBS Studioの音声ミキサーで、通常時(大声を出していないとき)のマイク音量が-10dB〜-15dBあたりにくるように調整し、ゲーム音はそのマイク音声よりも少し小さい音量、BGMはさらに小さい音量(-20dB以下など)にするのが一つの目安とされています。ただし、ゲームのジャンルやBGMの性質によって適切なバランスは異なりますので、後述するテスト配信での確認が重要です。
OBS Studioでの音量調整手順
OBS Studioでは、「音声ミキサー」を使用して、各音声ソースの音量を個別に調整できます。
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音声ミキサーの確認: OBS Studioの下部ドックエリアに「音声ミキサー」が表示されているか確認してください。ここに、現在アクティブな音声ソース(マイク、デスクトップ音声など)が表示されます。表示されていない場合は、上部メニューの「ドック」から「音声ミキサー」を選択して表示させます。
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ソースごとの音量調整: 音声ミキサーに表示されている各ソースには、音量スライダーとミュートボタン(スピーカーアイコン)があります。
- デスクトップ音声: これがゲーム音やPCから出るほとんどの音(Discordの音声なども含む場合がある)のソースです。ゲームを起動し、ゲーム音が聞こえている状態で、このスライダーを調整して配信に乗せるゲーム音量を決めます。
- マイク/Aux: ご自身のマイクの音声ソースです。マイクに向かって話し、このスライダーを調整してマイク音量を決めます。目安となるdB値(-10dB〜-15dBなど)を見ながら調整すると良いでしょう。音量が大きすぎると「音割れ」(クリッピング)が発生し、不快な音になります。音量バーが赤色の領域に頻繁に入る場合は、音量が大きすぎるサインです。
- 音声入力キャプチャ/メディアソースなど: BGMなどを別途追加している場合、そのソースが表示されます。BGMがメインの音声(マイク、ゲーム音)の邪魔にならないよう、スライダーを低めに調整します。
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モニター機能の活用: マイクや特定の音声ソースの音声を、配信に乗せるだけでなく、自分のイヤホンやヘッドホンでも確認したい場合があります。これは「モニター機能」で設定できます。 音声ミキサーで、設定したいソースの歯車アイコンをクリックし、「オーディオの詳細プロパティ」を選択します。「モニターリング」の項目で、以下のいずれかを選択します。
- モニターオフ (デフォルト): 自分の環境では聞こえず、配信にのみ乗ります。
- モニターのみ (出力オフ): 自分の環境では聞こえますが、配信には乗りません。
- モニターと出力: 自分の環境でも聞こえ、配信にも乗ります。マイクの音量や音質をリアルタイムで確認したい場合に便利ですが、設定を間違えるとエコーの原因になることもあります。
通常、マイクは「モニターと出力」に設定し、ゲーム音やBGMは「モニターオフ(デスクトップ音声にモニター出力する場合を除く)」に設定することが多いです。
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高度な音声プロパティの活用: 音声ミキサーの歯車アイコンからアクセスできる「オーディオの詳細プロパティ」では、各ソースの音量調整だけでなく、以下の設定も可能です。
- ステレオ/モノラル: 音声ソースのチャンネル設定を変更できます。マイクはモノラルであることが一般的です。
- 同期オフセット: 音声と映像にずれがある場合に調整できます。
- モニターリング: 前述のモニター機能の設定です。
- 音声モニタリングデバイス: モニターする音声を出力するデバイス(ヘッドホンなど)を指定します。
- トラック: 各音声ソースをどの配信トラックに乗せるか(録画ファイルにどの音声を残すか)を設定できます。初心者の方はデフォルト設定のままで問題ありません。
よくある音量トラブルと対処法
ゲーム配信でよく発生する音量に関するトラブルと、その対処法について解説します。
トラブル1:ゲーム音やマイク音が小さすぎる/大きすぎる
- 原因:
- OBS Studioの音声ミキサーでの音量設定が不適切。
- Windowsのサウンドミキサー(音量ミキサー)でのアプリケーションごとの音量設定が不適切。
- ゲーム自体の音量設定が小さすぎる/大きすぎる。
- マイクの物理的なゲイン設定や、Windowsのマイク音量設定が不適切。
- 対処法:
- OBS Studioの音声ミキサーを確認: まず、OBS Studioの音声ミキサーで、ゲーム音(デスクトップ音声など)やマイク音(マイク/Aux)のスライダーが適切な位置にあるか確認します。音量バーを見て、適切なdB値になっているかを確認してください。
- Windowsのサウンドミキサーを確認: Windowsのタスクバーにあるスピーカーアイコンを右クリックし、「音量ミキサーを開く」を選択します。ここで、ゲームのアプリケーションやOBS Studio、使用しているマイクなどの音量が個別に設定できます。ゲームの音量がここで極端に小さくなっていたりしないか確認し、必要に応じて調整します。
- ゲーム内の音量設定を確認: 多くのゲームにはゲーム自体の音量を調整する設定があります。ここでゲームのマスター音量が低すぎないか確認してください。
- マイクの物理設定とWindows設定を確認: 使用しているマイク自体にゲイン(音量の増幅率)を調整するダイヤルがある場合は、適切な位置になっているか確認します。また、Windowsの「サウンド設定」を開き、使用しているマイクのプロパティから音量レベルを確認・調整します。
トラブル2:マイクにノイズが入る
- 原因:
- マイク自体の性能や品質。
- 周囲の環境音(エアコンの音、生活音など)。
- 接続ケーブルの問題。
- マイクのゲイン(感度)が高すぎる。
- PC内部のノイズを拾っている。
- 対処法:
- 静かな環境での収録: 可能であれば、周囲の騒音を減らした環境で配信を行います。
- マイクのゲイン調整: マイクのゲインが高すぎると、小さなノイズも拾いやすくなります。OBS Studioのマイク音量スライダーだけでなく、マイク自体のゲイン設定やWindowsのマイク設定も確認し、必要最低限の音量でクリアに拾えるように調整します。
- OBS Studioのノイズ抑制フィルター: OBS Studioの音声ミキサーでマイクソースの歯車アイコンをクリックし、「フィルター」を選択します。ここで「ノイズ抑制」フィルターを追加すると、不要な環境音をカットすることができます。設定は「RNNoise (高品質)」が推奨されることが多いです。
- ケーブルの交換やUSBポートの変更: 接続ケーブルに問題がある場合や、PCの他の機器との干渉でノイズが発生している可能性もあります。別のケーブルを試したり、接続するUSBポートを変更したりすることで改善することがあります。
トラブル3:BGMが大きすぎて声やゲーム音が聞こえない
- 原因:
- OBS Studioの音声ミキサーでのBGMソースの音量設定が高すぎる。
- 対処法:
- OBS Studioの音声ミキサーを確認: BGMとして追加しているソースのスライダーを下げてください。前述の目安の通り、ゲーム音やマイク音よりもかなり低い音量に設定するのが基本です。
トラブル4:特定の音が配信に乗らない/二重に聞こえる(エコー)
- 原因:
- 配信に乗らない: Windowsのサウンドミキサーで、そのアプリケーションの出力先がOBS Studioが拾っていないデバイスになっている。OBS Studioのデスクトップ音声ソースが無効になっている、あるいは設定が間違っている。
- 二重に聞こえる(エコー): OBS Studioのマイクソースのモニター機能が「モニターと出力」になっており、さらにそのモニター音声がデスクトップ音声としてOBS Studioに再度入力されている。あるいは、マイク入力がOBS Studioと別の通話ソフト(Discordなど)の両方で同時に配信に乗る設定になっている。
- 対処法:
- 配信に乗らない場合:
- Windowsのサウンドミキサー(音量ミキサー)を開き、配信に乗せたいアプリケーション(ゲームやDiscordなど)の出力デバイスが、OBS Studioが拾っている「デスクトップ音声」と同じデバイスになっているか確認します。
- OBS Studioの音声ミキサーで「デスクトップ音声」が有効になっているか確認します。無効になっている場合はスピーカーアイコンをクリックして有効にします。
- OBS Studioで「音声入力キャプチャ」ソースとして特定のアプリケーション音声を個別に拾っている場合は、その設定が正しいか確認します。
- 二重に聞こえる場合(エコー):
- OBS Studioの音声ミキサーでマイクソースの歯車アイコンをクリックし、「オーディオの詳細プロパティ」を開きます。「モニターリング」が「モニターと出力」になっている場合、これを「モニターオフ」または「モニターのみ (出力オフ)」に変更します。自分のマイク音声をモニターしたい場合は、「モニターのみ」にし、配信にはマイクソース自体から出力されるようにします。
- 配信ソフト(OBS Studio)と通話ソフト(Discordなど)でマイク音声を同時に配信に乗せていないか確認します。OBS Studio側でマイク音声を扱う場合は、通話ソフト側の配信向け音声設定をオフにします。
- 配信に乗らない場合:
テスト配信での音量チェック
OBS Studioで音量設定を行った後は、必ずテスト配信を行うことを推奨します。実際の配信環境で、意図した通りに音が聞こえているかを確認することが非常に重要です。
- テスト配信の準備:
- 配信サイトで、配信を一般公開せずに行える設定(限定公開、プライベート配信など)があるか確認します。
- OBS Studioの配信設定を行います(詳細は別の記事で解説されていますが、テストであれば仮設定でも構いません)。
- テスト配信の実施:
- ゲームを起動し、実際にプレイしながら、マイクで話し、BGMを流すなど、通常の配信に近い状況を作ります。
- 数分間テスト配信を行います。
- 配信内容の確認:
- 可能であれば、別のPCやスマートフォンを使って、視聴者として自分の配信を確認します。難しければ、配信サイトのアーカイブ機能を使って、テスト配信終了後に内容を再生して確認します。
- チェックポイント:
- ゲーム音、マイク音声、BGMのバランスは適切か。
- マイク音声はクリアに聞こえるか、小さすぎたり大きすぎたりしないか。
- 音割れが発生していないか(特に大声を出したときなど)。
- ノイズは気にならないか。
- 特定の音が聞こえない、あるいは二重に聞こえるといった問題はないか。
- 可能であれば、信頼できる友人などにテスト配信を見てもらい、フィードバックをもらうのも有効です。
テスト配信で問題が見つかった場合は、この記事で解説した対処法などを参考に、再度OBS StudioやPC側の設定を調整し、納得いく音量バランスになるまで繰り返してください。
まとめ
ゲーム配信において、音量設定とバランス調整は、視聴者に快適な体験を提供し、配信の品質を高める上で非常に重要な要素です。適切な音量バランスは、ゲーム音、マイク音声、BGMの相対的な音量を理解し、調整することから始まります。
OBS Studioの音声ミキサーを使えば、各ソースの音量を視覚的に確認しながら調整できます。よくある音量トラブルも、原因を特定し、OBS StudioやWindowsのサウンド設定などを確認することで、多くの場合解決可能です。
そして何よりも重要なのは、設定変更の度にテスト配信を行い、実際の配信で音がどのように聞こえているかを確認することです。視聴者の声にも耳を傾けながら、最適な音量環境を目指してください。
最初は少し複雑に感じるかもしれませんが、一つずつ手順を確認し、テストと調整を繰り返すことで、必ず理想的な音声設定にたどり着けるはずです。高品質な音声は、きっとあなたのゲーム配信をより魅力的なものにしてくれるでしょう。