ゲーム配信中にPCが重い・カクつく時の原因と具体的な対処法ガイド
ゲーム配信は、PCにかなりの負荷をかける作業です。ゲームを快適にプレイしつつ、同時にエンコードや配信処理を行うため、PCの性能が不足していたり、設定が適切でなかったりすると、画面がカクついたり、音声が途切れたり、最悪の場合はフリーズしたりといったパフォーマンスの問題が発生することがあります。
このような問題は、配信の品質を低下させるだけでなく、ゲーム体験自体も損なう可能性があります。特に、初めてゲーム配信に挑戦される方にとって、こうしたトラブルは不安材料となるでしょう。
この記事では、ゲーム配信中にPCが重くなる、カクつくといったパフォーマンス問題の主な原因を明確にし、それぞれの原因に対する具体的な対処法を初心者の方でも理解できるよう丁寧に解説します。手順に沿って確認・実行することで、配信パフォーマンスの改善を目指しましょう。
ゲーム配信中にPCが重くなる主な原因
ゲーム配信中にPCのパフォーマンスが低下する原因は一つだけではありません。複数の要因が組み合わさっている場合も多くあります。主な原因として以下の点が考えられます。
- CPUまたはGPUの負荷過多:
- ゲーム自体が高い処理能力を要求している。
- 配信ソフトウェア(OBS Studioなど)のエンコード設定がPCの性能に対して重すぎる。
- ゲームと配信ソフトウェア以外のアプリケーションが同時に多くのリソースを使用している。
- メモリ(RAM)不足:
- ゲーム、配信ソフトウェア、その他のアプリケーションが必要とするメモリの合計量が、PCに搭載されているメモリ容量を超えている。
- ストレージの問題:
- ストレージ(HDD/SSD)の空き容量が非常に少ない。
- 低速なHDDを使用しており、データ読み書きがボトルネックになっている。
- ネットワーク回線の問題:
- 上り(アップロード)速度が配信に必要な帯域幅に対して不足している。
- 回線が不安定でパケットロスが発生している。
- Wi-Fi接続を使用しており、有線接続に比べて不安定になっている。
- 配信ソフトウェア(OBS Studioなど)の設定:
- 解像度やフレームレートがPCの性能や回線速度に見合っていない高すぎる設定になっている。
- エンコーダー設定(例: H.264, HEVC)やエンコーダープリセット(例: veryfast, faster, mediumなど)がPCに過大な負荷をかけている。
- ゲーム内の設定:
- ゲーム内のグラフィック設定が高すぎる(解像度、テクスチャ品質、エフェクトなど)。
- PCの冷却不足:
- PC内部の温度が上昇しすぎ、CPUやGPUが性能を意図的に制限する(サーマルスロットリング)。
- 冷却ファンやヒートシンクにホコリが溜まっている。
- ドライバの問題:
- グラフィックドライバやその他のシステムドライバが最新ではない、または破損している。
パフォーマンス問題の原因を特定する
問題解決の第一歩は、何がボトルネックになっているのかを特定することです。Windowsを使用している場合、「タスクマネージャー」が非常に役立ちます。
- ゲームと配信ソフトウェア(OBS Studioなど)を起動し、配信中と同じような状況を再現します。
- キーボードの
Ctrl + Shift + Esc
を同時に押してタスクマネージャーを開きます。 - 「パフォーマンス」タブを選択します。
-
CPU、メモリ、GPU、ディスク(ストレージ)、イーサネット(ネットワーク)の利用率を確認します。
-
CPU利用率が常に高い(80%以上): CPUがボトルネックになっている可能性が高いです。
- GPU利用率が常に高い(80%以上): GPUがボトルネックになっている可能性が高いです。
- メモリ利用率が非常に高い(90%以上): メモリ不足の可能性があります。
- ディスク利用率が特定のタイミングで100%になる: ストレージがボトルネックになっている可能性があります。
- イーサネット(ネットワーク)の送信速度が配信ビットレートに近い、または常に張り付いている: 回線速度が不足している可能性があります。
OBS Studioを使用している場合は、OBS Studioのウィンドウ下部にあるステータスバーや、メニューの「表示」>「ドック」>「統計」を表示させることでも、CPU使用率(OBS自体と全体)、ドロップしたフレーム数、エンコード負荷などを確認できます。特に「エンコードスキップ数」や「ドロップフレーム数」が多い場合は、PCの処理能力や回線速度に問題がある可能性が高いです。
パフォーマンス問題への具体的な対処法
原因特定に基づいて、以下の対処法を試してみましょう。複数の原因が考えられる場合は、一つずつ順番に試していくことが重要です。
1. OBS Studioの設定を見直す
配信ソフトウェアの設定は、PC負荷に直結します。初心者向けの推奨設定から始めて、必要に応じて調整します。
- 解像度とフレームレートを下げる:
- 例: 1920x1080 (Full HD) 60fps でカクつく場合、1280x720 (HD) 60fps、または 1920x1080 30fps、1280x720 30fps などに変更します。特に30fpsへの変更は負荷を大きく軽減できます。OBS Studioの設定画面で「出力(配信)」と「映像」タブを確認してください。
- エンコーダーを変更する:
- 使用しているGPUに搭載されているハードウェアエンコーダー(NVIDIA NVENC や AMD VCE/AMF)があれば、これを利用することを強く推奨します。CPU負荷を大幅に軽減できます。OBS Studioの「出力(配信)」タブで設定可能です。お使いのグラフィックボードに対応したエンコーダーを選択してください。
- CPUエンコーダー (x264) を使用している場合は、CPU使用率が高くなりやすいです。「エンコーダープリセット」を「veryfast」や「faster」など、より軽い(低品質になりますが)設定に変更します。
- ビットレートを下げる:
- 回線速度がボトルネックになっている場合、またはエンコーダー設定が適切でない場合にビットレートを下げることで改善することがあります。ただし、画質は低下します。配信サイトが推奨するビットレートや、ご自身の回線速度に見合った値に設定します。OBS Studioの「出力(配信)」タブで設定可能です。
- OBS Studioのその他の設定:
- 「ソース」に使用していないものがあれば削除または非表示にする。
- 「フィルタ」で負荷の高いものを適用していないか確認する。
- プレビュー画面を非表示にする(「表示」メニューから)。
2. ゲーム内の設定を調整する
ゲーム側の設定もPCの負荷に大きく影響します。
- グラフィック設定を下げる:
- ゲーム内の解像度、グラフィック品質(テクスチャ、影、アンチエイリアシングなど)、Vsync(垂直同期)設定を見直します。これらの設定を下げることでGPUやCPUの負荷を軽減できます。
- 特に、配信に使用する解像度とゲームの解像度を一致させると、OBSでのスケーリング処理が不要になり、わずかに負荷を軽減できる場合があります。
3. 不要なアプリケーションを終了する
ゲームと配信ソフトウェア以外に、多くのアプリケーションを同時に起動していると、それらがPCのリソース(CPU、メモリ)を消費し、パフォーマンス低下の原因となります。
- ゲームや配信に関係のないウェブブラウザのタブ、メーラー、チャットツール、ファイル共有ソフトなどは、配信中はできる限り終了させましょう。
- タスクマネージャーの「プロセス」タブで、CPUやメモリを多く消費しているアプリケーションがないか確認してください。
4. PCのドライバを更新する
グラフィックドライバは特に重要です。古いドライバはパフォーマンスの問題を引き起こすことがあります。
- NVIDIA GeForce Experience や AMD Radeon Software などの公式ツールを使用して、グラフィックドライバを常に最新の状態に保ちましょう。
- マザーボードのチップセットドライバなど、他の重要なドライバも更新することで安定性が向上する場合があります。
5. PCの冷却を確認する
PC内部の温度が上がりすぎると、PCは部品保護のために性能を落とします。
- PCケース内の通気性が良いか確認します。
- PC内部(特にCPUクーラーやグラフィックボードのファン)にホコリが溜まっていないか確認し、定期的に清掃します。
- ノートPCの場合は、PC底面の吸排気口を塞がないように置き、必要であれば冷却台の使用を検討します。
- タスクマネージャーや専用のモニタリングツールでCPUやGPUの温度を確認し、異常に高くないかチェックします。
6. ストレージの空き容量を確保する
システムドライブ(Windowsがインストールされているドライブ)の空き容量が極端に少ないと、PCの動作が不安定になることがあります。
- 不要なファイルを削除したり、別のドライブに移動したりして、システムドライブにある程度の空き容量を確保しましょう(一般的に総容量の10-15%程度)。
7. ネットワーク回線を見直す
回線速度、特に上り(アップロード)速度が配信に必要なビットレートに対して不足していると、配信画面のカクつき(フレームのドロップ)が発生します。
- 回線速度測定サイトで、ご自身の回線の速度(特に上り)を測定します。推奨される配信ビットレートに対して十分な上り速度があるか確認してください。
- 可能な限りWi-Fiではなく有線LAN接続を使用します。有線接続の方が通信が安定しやすく、速度低下やパケットロスを防ぐことができます。
- 同時に家庭内でインターネットを利用している他の機器(動画視聴、ダウンロードなど)がないか確認し、もしあれば配信中は利用を控えてもらうことで回線負荷を軽減できます。
8. ハードウェア(PCパーツ)のアップグレードを検討する
これまでの対処法を試しても改善が見られない場合、お使いのPCの根本的な性能がゲーム配信を行う上で不足している可能性があります。
- タスクマネージャーで常に高い利用率を示している部品(CPUやGPU、メモリ)があれば、その部品をより高性能なものに交換することを検討します。ただし、これは費用がかかるため、慎重に判断が必要です。
- 特にノートPCの場合、部品交換が難しいことが多いため、新しいPCの購入が必要になる場合もあります。
問題解決のためのステップ
PCパフォーマンス問題を解決するためには、以下のステップで進めることを推奨します。
- タスクマネージャーやOBSの統計情報でボトルネックを特定する。
- 特定したボトルネックに対する対処法を、負荷の軽いもの(設定変更、不要アプリ終了)から順番に試す。
- 変更を加えるたびに、ゲーム配信を行い、改善が見られるか確認する。 一度に複数の設定を変更すると、何が効果があったのか分からなくなります。
- それでも改善しない場合は、別のボトルネックがないか再度タスクマネージャーなどで確認する。
- 最終手段として、PCのハードウェアアップグレードを検討する。
まとめ
ゲーム配信中のPCパフォーマンス問題は、原因特定と適切な対処を行うことで多くの場合改善が見られます。この記事で解説したように、CPUやGPUの負荷、メモリ不足、ストレージ、回線、そしてOBS Studioやゲーム内の設定など、様々な要因が考えられます。
まずはタスクマネージャーなどを活用して問題の根源を探り、ご紹介した具体的な対処法を一つずつ丁寧に試してみてください。特に、OBS Studioの設定調整やゲーム内設定の最適化は、大きな改善をもたらす可能性があります。
設定変更を行った際は、必ず短時間でも良いのでテスト配信を行い、実際の配信画面やPCの挙動を確認する習慣をつけることが重要です。この記事が、あなたのゲーム配信がより快適になる一助となれば幸いです。