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ゲーム配信で発生しやすい音声トラブルの原因と具体的な対処法

Tags: ゲーム配信, 音声トラブル, OBS Studio, トラブルシューティング, マイク設定

ゲーム配信において、視聴者が快適に視聴できるかどうかは映像だけでなく音声の品質に大きく依存します。しかし、初めてゲーム配信に取り組む際、音声に関するトラブルに直面することは少なくありません。音が小さすぎたり大きすぎたり、あるいは不快なノイズやハウリングが発生したりと、様々な問題が考えられます。

この記事では、ゲーム配信で発生しやすい代表的な音声トラブルを取り上げ、その原因を特定し、初心者の方でも実践できる具体的な対処法を解説します。これらの情報が、皆様のゲーム配信における音声の課題解決の一助となれば幸いです。

ゲーム配信で発生しやすい音声トラブルの種類

ゲーム配信における音声トラブルは多岐にわたりますが、特に初心者の方が遭遇しやすい典型的な問題として、以下のものが挙げられます。

これらの問題は、機材の接続ミス、ソフトウェアの設定不備、あるいはPC環境やゲーム側の設定など、様々な要因によって引き起こされます。

症状別の原因と具体的な対処法

ここでは、上記の代表的な音声トラブルについて、それぞれの原因と具体的な解決策をステップごとに解説します。

1. 配信に乗る音量が適切でない(小さすぎる/大きすぎる)

最も基本的なトラブルの一つです。視聴者にとって聞き取りやすい音量に調整することは、快適な視聴体験のために不可欠です。

考えられる原因:

具体的な対処法:

  1. OBS Studio音声ミキサーの確認:
    • OBS Studio画面下部にある「音声ミキサー」を確認します。各ソース(マイク、ゲーム音声、デスクトップ音声など)にスライダーが表示されています。
    • 配信する際に適切な音量になるよう、このスライダーを調整します。通常、配信ソフトの音声レベルメーターが、音が大きい時に赤色にならない程度の音量に設定することが推奨されます。メーターのピークが-10dB〜-15dBあたりに収まるように調整すると、音割れを防ぎつつ十分な音量を確保しやすくなります。
    • 特定のソースだけが小さい/大きい場合は、そのソースのスライダーを重点的に調整します。
  2. Windows/macOSのシステム音量設定:
    • PC全体のマスター音量が小さすぎないか、大きすぎないかを確認します。タスクバー(Windows)またはメニューバー(macOS)の音量アイコンから調整できます。
    • 特に、マイクの入力レベルがシステム側で低く設定されている場合があります。Windowsの場合は「サウンド設定」→「サウンド コントロール パネル」→「録音」タブで使用しているマイクを選択し「プロパティ」を開き、「レベル」タブでマイク音量とマイクブーストを確認・調整してください。macOSの場合は「システム設定」→「サウンド」→「入力」で使用しているマイクの入力レベルを確認・調整します。
  3. 使用機材の物理的な音量設定:
    • マイク本体やオーディオインターフェース、ミキサーなどにゲイン(入力感度)やボリュームのつまみがある場合、それが適切に設定されているか確認します。マイクのゲインが高すぎるとノイズが入りやすくなります。
    • ヘッドセットやスピーカーの音量自体が小さすぎたり大きすぎたりしないかも確認します。これは配信に乗る音量とは直接関係ありませんが、ご自身のモニター環境が適切でないと、配信上の音量調整を誤る可能性があります。
  4. ゲーム側の音量設定:
    • 配信するゲーム自体の音量設定が極端に小さくないか確認します。ゲームによっては、BGM、効果音、ボイスなどの音量を個別に調整できます。必要に応じて、ゲーム内の設定で全体の音量を上げたり、特定の音(例:BGMが大きすぎてゲーム音が聞こえにくい場合)の音量を下げたりします。
  5. OBS Studioでの詳細設定:
    • 音声ミキサーで、各ソースの歯車アイコンをクリックし「プロパティ(詳細)」を選択します。ここで、ソースごとの「音量」をパーセント単位で調整することも可能です。スライダーよりも細かい調整ができます。

2. 不快なノイズが入る(サー音、ブーン音など)

ノイズは配信の品質を著しく低下させます。原因は多岐にわたるため、一つずつ確認していく必要があります。

考えられる原因:

具体的な対処法:

  1. マイクのゲイン調整:
    • マイク本体やオーディオインターフェースのゲイン設定を確認します。ゲインが高すぎると、小さな環境音やマイク自体のノイズまで拾ってしまいます。マイクからある程度距離を保ちつつ、声を張ったときに音声レベルメーターが適切な範囲(赤色にならない程度)に達する最低限のゲインに設定します。
  2. 環境音の低減:
    • PCのファンがうるさい場合は、PCの位置を変えたり、可能であれば静音性の高いPCパーツの使用を検討します。
    • 部屋のエアコンや換気扇、外部からの騒音(窓を閉めるなど)を可能な限り抑えます。
    • 指向性のマイクを使用している場合は、ノイズ源と逆の方向にマイクを向けます。
  3. 機材の接続確認と交換:
    • マイクケーブル(特にXLRケーブルの場合、バランス接続がノイズに強いです)、USBケーブル、オーディオインターフェースなどの接続が緩んでいないか確認します。
    • 可能であれば、別のケーブルやマイク、オーディオインターフェースを試してみて、特定の機材がノイズの原因かを切り分けます。安価なケーブルはノイズを拾いやすいことがあります。
  4. 電源関係の確認:
    • PCやオーディオ機器を接続しているコンセントに問題がないか確認します。タコ足配線や、他の家電製品と同じコンセントを使用している場合、ノイズの原因となることがあります。可能であれば、PCとオーディオ機器は壁のコンセントから直接電源を取るようにします。
    • USB接続のマイクやオーディオインターフェースの場合、PCのUSBポート自体に問題がある可能性も考えられます。別のUSBポート(特に、USB 3.0よりもUSB 2.0ポートの方が安定している場合もあります)を試したり、可能であればセルフパワー(外部電源供給型)のUSBハブを使用したりすることを検討します。
  5. OBS Studioのノイズ抑制フィルター:
    • OBS Studioの音声ミキサーで、ノイズが入るソース(通常はマイク)の歯車アイコンをクリックし、「フィルタ」を選択します。
    • ここで「+」ボタンをクリックし、「ノイズ抑制」または「ノイズゲート」フィルターを追加します。
      • ノイズ抑制: 背景の定常的なノイズ(サー音など)を低減するのに役立ちます。「Speex」よりも「RNNoise (高品質、CPU使用率やや高)」の方が一般的に高品質です。適用量を調整し、音声に違和感が出ない範囲で使用します。
      • ノイズゲート: 設定したしきい値以下の音量をミュートすることで、マイクが音を拾わない間のノイズを完全にカットします。マイクに向かって話している間だけマイクがオンになるようなイメージです。設定(閉鎖閾値、開放閾値、保持時間、アタックタイム、リリースタイム)を適切に行う必要があります。環境ノイズが大きく、ノイズ抑制だけでは難しい場合に有効です。

3. ハウリングが起こる

ハウリングは、マイクがスピーカーから出ている音を拾い、それが再びスピーカーから出て...というループによって発生する不快な現象です。

考えられる原因:

具体的な対処法:

  1. ヘッドセットの使用:
    • 最も簡単な解決策は、ヘッドセットを使用することです。ヘッドホンから出る音は基本的にマイクが拾わないため、ハウリングは発生しません。ゲーム配信では、快適なモニター環境のためにもヘッドセットの使用が強く推奨されます。
  2. マイクとスピーカーの配置調整:
    • スピーカーを使用する場合は、マイクとスピーカーの距離を十分に離し、マイクがスピーカーからの音を直接拾わないように、マイクの向きを調整します。
  3. マイクゲインとスピーカー音量の調整:
    • マイクのゲインが高すぎると小さな音も拾ってしまうため、ハウリングしやすくなります。適切なゲインに設定します。
    • スピーカーの音量を下げて、マイクが拾いにくいレベルにします。
  4. OBS Studioでのマイク音声モニタリング設定確認:
    • OBS Studioの音声ミキサーで、マイクソースの歯車アイコンをクリックし、「オーディオの詳細プロパティ」を選択します。
    • マイクソースの「音声モニタリング」が「モニターオフ」になっているか確認します。「モニターオン(出力)」や「モニターと出力」になっている場合、マイクに入力された音がPCのスピーカーから出力され、ハウリングの原因となります。通常は「モニターオフ」に設定してください。ご自身の声を聞きながら調整したい場合は、遅延の少ないオーディオインターフェースのダイレクトモニタリング機能を使用するか、OBSの「モニターのみ(出力はミュート)」を適切に設定し、同時にスピーカーを使わないようにします。

4. 音声が途切れる、または映像と音声に遅延が発生する

配信の安定性に関わる問題です。原因は多岐にわたるため、順を追って確認します。

考えられる原因:

具体的な対処法:

  1. PCリソースの確認:
    • タスクマネージャー(Windows)やアクティビティモニタ(macOS)を開き、ゲーム配信中のCPU使用率、メモリ使用率、ディスク使用率を確認します。これらが常に高く張り付いている場合、PCスペックが不足している可能性があります。
    • OBS Studioのウィンドウ下部にあるステータスバーにも、CPU使用率とフレームレートが表示されます。CPU使用率が高すぎる(例: 80%以上が続く)場合は、PC負荷軽減の対策が必要です。
  2. OBS Studioの設定最適化:
    • エンコーダー: PCスペックが十分でない場合、エンコーダーを「ソフトウェア(x264)」から「ハードウェア(NVIDIA NVENC、AMD VCE/VCN、Intel QuickSync)」に変更すると、CPU負荷が軽減されることがあります。お使いのGPUが対応しているか確認してください。
    • 解像度・フレームレート: 配信解像度を下げたり(例: 1920x1080から1280x720)、フレームレートを下げたり(例: 60fpsから30fps)することで、PC負荷や回線負荷を軽減できます。
    • ビットレート: 配信ビットレートが高すぎると、回線に負荷がかかり、音声や映像の途切れの原因となります。ご自身の回線速度に見合ったビットレートに設定してください。(推奨ビットレートは配信サイトや解像度・フレームレートによりますが、一般的に720p/30fpsで2500〜4000kbps、1080p/60fpsで4500〜6500kbps程度が一つの目安です。)
  3. 回線環境の確認:
    • インターネット回線速度測定サイト(例: Speedtest by Ookla)で、アップロード速度が安定して確保できているか確認します。
    • 無線LAN(Wi-Fi)を使用している場合は、有線LAN接続に切り替えることで回線の安定性が向上し、遅延や途切れが解消される可能性があります。
    • ルーターやモデムに問題がないか確認し、必要であれば再起動します。
  4. 機材のドライバ更新と確認:
    • 使用しているマイク、オーディオインターフェース、キャプチャーボードなどのドライバが最新であるか確認します。ドライバが古いと正常に動作しないことがあります。
    • キャプチャーボードを使用している場合、キャプチャーボードの設定や、PCとの接続(USB 3.0ポートに正しく接続されているかなど)を確認します。キャプチャーボード自体が遅延の原因となることもあります。
  5. ゲーム側の設定調整:
    • ゲーム側のグラフィック設定などを下げて、PCへの負荷を軽減します。ゲームが高負荷すぎると、PCリソースが不足し、配信ソフトウェアが正常に動作しなくなることがあります。
  6. OBS Studioでの音声同期オフセット調整:
    • 映像に対して音声が遅延している場合、OBS Studioの「オーディオの詳細プロパティ」で、遅延している音声ソースに対して「同期オフセット」を設定することで、遅延を補正できます。これは試行錯誤が必要な調整です。

5. 特定の音だけが配信に乗らない、または意図しない音が乗る

配信したい音だけが乗らず、あるいはゲーム音以外のPC通知音などが乗ってしまうケースです。

考えられる原因:

具体的な対処法:

  1. OBS Studioの音声ソース確認:
    • OBS Studioのソースリストに、配信したい音声ソース(「デスクトップ音声」や特定のオーディオ入力デバイスなど)が追加され、有効になっているか確認します。
    • 「デスクトップ音声」でゲーム音やPCの通知音全般を取り込むのが一般的ですが、特定のアプリケーションの音だけを取り込みたい場合は、「アプリケーション音声キャプチャ (BETA)」などのソースを使用します。
  2. Windows/macOSのサウンドミキサー確認:
    • Windowsの場合、タスクバーの音量アイコンを右クリックし、「音量ミキサーを開く」を選択します。ここで、OBS Studioや配信したいゲーム、アプリケーションの音量がミュートになっていないか、または極端に小さくなっていないか確認します。
    • macOSの場合、「システム設定」→「サウンド」→「出力」で、音が出力されているデバイスを確認します。特定のアプリケーションの出力先を変更している場合は、元に戻します。
  3. ゲーム/アプリケーションの音声出力設定:
    • 一部のゲームやアプリケーションでは、音声出力デバイスを個別に設定できる場合があります。これが意図しないデバイス(例: ヘッドホンではなくPC本体スピーカー)に設定されていると、OBS Studioで「デスクトップ音声」を取り込んでも配信に乗らないことがあります。ゲームやアプリケーション内の設定を確認し、意図した音声出力デバイス(PCの標準出力デバイスなど)に設定します。
  4. キャプチャーボードの音声設定:
    • 家庭用ゲーム機などをキャプチャーボード経由で配信する場合、ゲーム音声をキャプチャーボード経由でPCに取り込む設定が必要です。OBS Studioで、キャプチャーボードをソースとして追加する際に、音声入力も同時に設定するか、別途「音声入力キャプチャ」ソースとして追加し、キャプチャーボードからの音声を選択します。キャプチャーボードの専用ソフトウェアがある場合は、そちらの設定も確認してください。

よくある質問 (Q&A)

Q: マイクから「サー」というノイズが常に入ります。どうすれば良いですか?

A: 最も一般的なノイズの一つです。まず、マイクのゲインが高すぎないか確認し、適切なレベルに調整します。次に、マイクケーブルや接続ポートを変更してみたり、PCやオーディオ機器の電源を壁のコンセントから直接取るようにしたりすることで、電気的なノイズが軽減されることがあります。OBS Studioのノイズ抑制フィルター(特にRNNoise)を適用することも有効ですが、音声に不自然さが出ない範囲で使用してください。

Q: ゲーム音だけが配信に乗らず、マイクの音しか聞こえません。どう確認すれば良いですか?

A: まず、OBS Studioの音声ミキサーに「デスクトップ音声」やゲーム音を取り込むためのソース(例: キャプチャーボードの音声入力)が追加されているか確認し、有効になっているか確認します。次に、Windows/macOSのサウンドミキサーで、ゲームアプリケーションの音量がミュートになっていないか確認します。最後に、ゲーム内の音声出力設定が、PCの標準出力デバイスになっているか確認します。

Q: 映像はスムーズなのに、音声だけが遅れて聞こえます。どう調整すれば良いですか?

A: 回線速度やPC負荷が原因で音声処理が遅延している可能性が考えられます。回線速度の確認、有線LANへの切り替え、PC負荷軽減(OBS設定の最適化、ゲーム設定の調整)を試してください。これらの対策を行っても遅延が解消されない場合は、OBS Studioの「オーディオの詳細プロパティ」で、遅延している音声ソースに対して「同期オフセット」を設定することで、手動で遅延を補正できる場合があります。ただし、この調整は試行錯誤が必要です。

まとめ

ゲーム配信における音声トラブルは、初心者の方にとって大きな壁となることがありますが、原因の多くは機材の接続ミスやソフトウェアの設定不備に起因します。この記事で解説した症状別の原因と対処法を一つずつ確認していくことで、問題の解決に繋がる可能性が高いです。

重要なのは、問題が発生した際に慌てず、どの音がどのような状態になっているかを冷静に把握することです。そして、原因と考えられる箇所を一つずつ潰していく地道な作業が解決への近道となります。

もしこの記事を読んでも問題が解決しない場合は、使用している機材のメーカーサポートに問い合わせる、あるいはゲーム配信に関するオンラインコミュニティで具体的な状況を相談してみることも有効な手段です。

この記事が、皆様が快適なゲーム配信環境を構築し、視聴者の方々に高品質な音声を届けられるようになるための一助となれば幸いです。