ゲーム配信向けマイクの選び方とOBSでの音声設定方法
ゲーム配信において、映像と同様に重要な要素が音声です。高品質な音声は、視聴者に快適な視聴体験を提供し、配信者の言葉やゲームの音をクリアに届けるために不可欠です。特に、自身の声が聞き取りやすいかどうかは、視聴者とのコミュニケーションの質を大きく左右します。
この記事では、ゲーム配信をこれから始める方向けに、適切なマイクの選び方から、多くの配信者が利用している配信ソフトウェア「OBS Studio」での基本的な音声設定方法までを順を追って解説します。
配信向けマイクの種類と特徴
ゲーム配信に使用されるマイクにはいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。主な種類として、「ダイナミックマイク」と「コンデンサーマイク」があります。
-
ダイナミックマイク:
- 比較的堅牢で、湿気や衝撃に強い構造です。
- 電源供給(ファンタム電源)が不要な場合が多いです。
- 周囲の騒音を拾いにくく、特定の音源(話し声など)をピンポイントで捉えるのに適しています。
- 比較的大音量に強く、力強い音声を得やすい傾向があります。
- ライブパフォーマンスや騒がしい環境での録音・配信に向いています。
-
コンデンサーマイク:
- 高い感度を持ち、繊細な音や小さな音も捉えやすいです。
- クリアで詳細な音声を得られます。
- 動作にはファンタム電源(多くの場合、オーディオインターフェースやミキサーから供給)が必要です。
- 周囲の音を拾いやすいため、静かな環境での使用が推奨されます。
- スタジオでのボーカル録音や楽器録音、そして静かな配信環境でのゲーム実況などに向いています。
初心者の方が自宅でゲーム配信を行う場合、周囲の環境音(PCのファンノイズ、家族の声など)をどの程度拾うかを考慮する必要があります。静かな環境であればコンデンサーマイクで高音質を目指せますが、ある程度生活音がある環境では、ダイナミックマイクの方が扱いやすい場合があります。多くのゲーム配信初心者にとっては、USB接続のダイナミックマイクまたは比較的感度が抑えられたUSBコンデンサーマイクが導入しやすい選択肢となります。
マイクの接続方法
マイクをPCに接続する方法もいくつかあります。
-
USB接続:
- PCのUSBポートに直接接続して使用します。
- 別途オーディオインターフェースなどの機材が不要で、手軽に導入できます。
- PCがマイクとして直接認識するため、設定が比較的容易です。
- 多くの初心者向けマイクがこのタイプです。
-
XLR接続:
- マイクケーブル(XLRケーブル)を使用して、オーディオインターフェースやミキサーに接続します。
- オーディオインターフェースを通してPCに音声を入力します。
- 音質面で有利な場合が多く、ファンタム電源が必要なコンデンサーマイクを使用できます。
- 複数の入力端子を持つオーディオインターフェースを使えば、マイク以外の音源(楽器など)も同時に入力できます。
- USB接続に比べて機材が増えますが、拡張性や音質の追求が可能です。
手軽さを重視するのであればUSB接続マイク、将来的に機材を拡張したり、より本格的な音質を目指したりしたい場合はXLR接続マイクとオーディオインターフェースの組み合わせを検討すると良いでしょう。初心者が最初に選ぶマイクとしては、PCに直接繋ぐだけで使えるUSB接続のマイクが推奨されます。
初心者向けマイク選びのポイント
初めてゲーム配信用のマイクを選ぶ際に考慮すべきポイントをいくつかご紹介します。
- 予算: 予算に応じて選べるマイクの種類や品質が異なります。まずは1万円〜2万円程度のUSB接続マイクから検討を始めるのが現実的です。
- 種類: 自宅の配信環境に応じて、ダイナミックマイクかコンデンサーマイクかを検討します。生活音が多い場合はダイナミック、静かな環境を確保できる場合はコンデンサーが候補になります。USB接続のコンデンサーマイクでも、単一指向性(マイクの正面の音だけを拾いやすい特性)のものを選ぶと、周囲の音を拾いすぎずに済みます。
- 接続方法: 手軽さを優先するならUSB接続、将来的な拡張性や音質を重視するならXLR接続+オーディオインターフェースを選択します。初心者にはUSB接続がおすすめです。
- その他機能: マイク本体にミュートボタンが付いているか、ヘッドホン端子が付いていて自分の声を確認できるか(ダイレクトモニタリング)なども、配信中の利便性を高める重要な機能です。
多くのゲーム配信初心者から支持されている製品としては、SONYのECM-PCV80U(コンデンサーマイク、スタンド付き)、audio-technicaのAT2020(コンデンサーマイク、USB接続モデルやXLRモデルあり)、Blue Microphones(現在はLogicoolの一部)の Yeti(USBコンデンサーマイク)などがあります。これらの製品は、価格と性能のバランスが良く、多くの配信で使用実績があるため安心して導入しやすいでしょう。
OBS Studioでのマイク設定方法
マイクをPCに接続したら、次にOBS Studioでマイク音声をゲーム配信に乗せるための設定を行います。
1. マイクをPCに接続する
使用するマイクの接続方法に従って、PCに正しく接続してください。 * USBマイク: PCの空いているUSBポートにケーブルを接続します。PCが自動的にデバイスとして認識するまで待ちます。 * XLRマイク: マイクとオーディオインターフェースをXLRケーブルで接続します。次に、オーディオインターフェースとPCをUSBケーブルなどで接続します。オーディオインターフェースによっては、事前に専用ドライバーソフトウェアのインストールが必要な場合があります。
2. OBS Studioを起動し、音声入力ソースを追加する
OBS Studioを起動します。画面下部の「ソース」ドックにある「+」ボタンをクリックし、「音声入力キャプチャ」を選択します。
表示されるウィンドウで、新しいソースの名前を分かりやすいように入力します(例: 「ゲーム配信用マイク」)、「新規を作成」が選択されていることを確認して「OK」をクリックします。
3. デバイスを選択する
「プロパティ」ウィンドウが表示されます。「デバイス」のドロップダウンリストから、PCに接続したマイクまたはオーディオインターフェースを選択します。使用しているマイク名やオーディオインターフェース名が表示されているはずです。正しいデバイスを選択したら「OK」をクリックします。
これで、選択したマイクからの音声がOBS Studioに入力されるようになります。
4. 音量レベルを確認・調整する
OBS Studioの画面下部にある「音声ミキサー」ドックを確認してください。追加した音声入力キャプチャソース(例: 「ゲーム配信用マイク」)が表示され、音量レベルメーターが話すと連動して動くようになります。
音量レベルメーターを見ながら、実際に話してみて適切な音量になるようにスライダーを調整します。メーターのピークが、赤色の領域に常時入るような大きすぎる音量は避けてください。音が割れたり歪んだりする原因となります。黄色い領域に時々入る程度が目安です。
5. 基本的な音声フィルターを設定する
より快適な音声にするために、基本的な音声フィルターを設定することを推奨します。音声ミキサードックで、マイクソースの歯車アイコンをクリックし、「フィルター」を選択します。
「音声フィルター」ウィンドウが表示されます。左下の「+」ボタンをクリックし、以下のフィルターを検討します。
- ノイズ抑制: マイクが拾う環境ノイズ(PCファン、エアコンの音など)を軽減します。初心者の方は、Methodに「RNNoise (高品質、CPU使用率高)」または「Speex (低品質、CPU使用率低)」を選択して試してみてください。RNNoiseの方が効果が高い傾向にあります。
- ゲイン: マイクの入力音量が全体的に小さい場合に、音量を底上げします。ノイズも一緒に大きくなるため、ノイズ抑制と組み合わせて使用します。
- ノイズゲート: 設定したしきい値よりも小さい音をカットします。無音時のサーノイズなどを完全に消したい場合に有効ですが、設定が難しく、声の語尾が途切れるなどの問題が発生することもあります。最初はノイズ抑制から試すのが良いでしょう。
これらのフィルターは、一つずつ追加し、実際に声を出しながら効果を確認し、パラメーターを調整してください。
よくある問題と対処法
-
OBSの音声ミキサーにマイクが表示されない/レベルメーターが動かない:
- マイクがPCに正しく接続されているか確認してください。USBケーブルが緩んでいないか、オーディオインターフェースの電源が入っているかなど。
- PCのサウンド設定で、使用するマイクが有効になっていて、既定のデバイスとして設定されているか確認してください。(Windowsの場合: 「設定」→「システム」→「サウンド」→「入力」デバイス)
- OBS Studioで追加した「音声入力キャプチャ」ソースのプロパティで、正しいデバイスが選択されているか再度確認してください。
- OBS StudioやPCを再起動してみてください。
-
声にノイズ(サー音、ブーン音など)が入る:
- マイクのゲイン(感度)設定が高すぎる可能性があります。OBSの音声ミキサーやオーディオインターフェース側でゲインを下げてみてください。
- 周囲の環境ノイズを拾っている可能性があります。OBSの「ノイズ抑制」フィルターを試してみてください。
- USBマイクの場合、PCのUSBポートの電源供給が不安定な場合があります。別のUSBポートに接続したり、電源供給能力の高いUSBハブを使ったりしてみてください。
- XLRマイクの場合、ケーブルやオーディオインターフェースの問題も考えられます。ケーブルを交換してみたり、オーディオインターフェースのゲイン設定を確認してみてください。ファンタム電源が必要なマイクの場合、正しく供給されているか確認してください。
- PC本体からの電磁干渉をマイクケーブルが拾っている可能性もあります。マイクケーブルをPC本体から離してみるなどの対策が有効な場合があります。
-
声の音量が小さすぎる、または大きすぎる:
- OBSの音声ミキサーのスライダーで音量を調整してください。
- マイク本体やオーディオインターフェースにゲイン(またはレベル)調整ノブがある場合、そちらでも調整可能です。
- OBSの「ゲイン」フィルターで全体的に音量を増幅することも可能ですが、ノイズも増幅される点に注意してください。
- マイクと口元の距離が適切か確認してください。マイクの種類(ダイナミック、コンデンサー)によって最適な距離は異なります。
まとめ
ゲーム配信における音声品質は、視聴者満足度に直結する重要な要素です。この記事では、ゲーム配信向けマイクの主な種類と接続方法、初心者向けのマイク選びのポイント、そしてOBS Studioでの基本的な音声設定方法について解説しました。
適切なマイクを選び、OBS Studioで正しく設定することで、クリアな音声を視聴者に届ける準備が整います。まずはUSB接続の定番マイクから始めてみて、慣れてきたらより高音質を目指して機材のアップグレードを検討するのも良いでしょう。
今回ご紹介した情報を参考に、ぜひあなたのゲーム配信の第一歩を踏み出してください。