ゲーム配信におけるボイスチャット(VC)音声の扱い方:配信に乗せる/乗せない設定ガイド
ゲーム配信を始める際、ゲームの音声だけでなく、一緒にプレイしている方とのボイスチャット(VC)音声も配信に乗せるか、あるいは乗せないかという選択が必要になります。意図せずプライベートな会話が配信に乗ってしまったり、逆にリスナーにVC音声が聞こえなかったりといった事態は避けたいものです。
この記事では、ゲーム配信においてVC音声をどのように扱うべきか、そしてOBS Studioを使用してその設定を行う具体的な方法について解説します。対象読者の方々が、自身の配信スタイルに合ったVC音声の制御を、迷いなく行えるようになることを目指します。
ゲーム配信におけるVC音声設定の重要性
ゲームの種類やプレイスタイルによっては、ボイスチャットはゲーム体験の重要な一部となります。しかし、VC音声の扱いを適切に設定しないと、以下のような問題が発生する可能性があります。
- プライバシーの問題: VC相手のプライベートな会話や個人情報が意図せず配信に乗ってしまう。
- コンテンツとしての問題: 配信内容に無関係なVC音声が混入し、視聴者のリスニング体験を損なう。
- 著作権の問題: VC相手が流しているBGMなどが配信に乗ってしまう。
- 配信の分かりやすさ: VC音声がないと、視聴者がゲーム内の状況やコミュニケーションを理解しにくい場合がある(特に協力・対戦プレイ)。
これらの問題を回避し、あるいは適切にVC音声を活用するために、配信におけるVC音声の設定は重要な準備の一つとなります。
VC音声を「配信に乗せる」か「乗せない」かの判断
まず、ご自身の配信でVC音声をどのように扱いたいかを決めます。
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VC音声を配信に乗せる場合:
- 視聴者にゲーム内のコミュニケーション状況を伝えたい場合。
- 友人との和やかなプレイ風景を共有したい場合。
- VC相手にも配信に参加している意識を持ってほしい場合。
- ただし、VC相手には必ず配信に音声が乗ることの同意を得る必要があります。
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VC音声を配信に乗せない場合:
- プライベートなVCの内容を配信したくない場合。
- VC相手が配信に音声を乗せることに同意していない場合。
- 配信のメインコンテンツをゲーム音声や自身のトークに絞りたい場合。
どちらのケースでも、VC音声だけをゲーム音声や自分のマイク音声から分離して制御できることが理想的です。
OBS StudioでのVC音声設定方法:アプリケーション音声キャプチャ (ベータ) の活用
近年、OBS Studioに「アプリケーション音声キャプチャ (ベータ)」というソースが追加され、特定のアプリケーションの音声だけを個別にキャプチャ・制御することが容易になりました。この機能は、特にVC音声を分離したい場合に非常に有効です。
VC音声を個別に制御するための前提準備
- VCアプリケーションの起動: Discord, TeamSpeak, Zoomなど、使用したいVCアプリケーションを起動しておきます。
- OBS Studioの起動: 最新版のOBS Studioを起動します。
- ゲームの起動: 配信したいゲームを起動し、VCアプリケーションと連携させておきます。
設定手順:VC音声をOBS Studioで個別にキャプチャする
この方法では、VCアプリケーションの音声だけを独立したソースとして扱います。これにより、VC音声だけをミュートしたり、音量バランスを調整したりすることが可能になります。
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新しい音声ソースの追加:
- OBS Studioの画面下部にある「ソース」ドックで右クリックし、「追加」を選択します。
- リストの中から「アプリケーション音声キャプチャ (ベータ)」を選択します。
- 「新規作成」を選択し、分かりやすい名前(例:
VC音声 (Discord)
)を入力して「OK」をクリックします。
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対象アプリケーションの選択:
- 設定ウィンドウが表示されます。
- 「ウィンドウ」のドロップダウンリストから、起動しているVCアプリケーションのウィンドウを選択します。例:
Discord.exe: Discord
- 「音声キャプチャモード」は通常「実行可能ファイルの一致をキャプチャする」で問題ありません。
- 「OK」をクリックして設定を完了します。
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音声ミキサーでの確認と調整:
- OBS Studioの画面下部にある「音声ミキサー」ドックに、手順2で追加したVC音声ソース(例:
VC音声 (Discord)
)が表示されていることを確認します。 - VCアプリケーションで誰かが話したり、テスト音声を出したりすると、このソースのレベルメーターが反応するはずです。
- ゲーム音声やマイク音声と同様に、このVC音声ソースの音量スライダーを調整することで、配信に乗るVC音声の音量を個別に設定できます。
- VC音声を配信に乗せたくない場合は、このソースのスピーカーアイコンをクリックしてミュートします。
- OBS Studioの画面下部にある「音声ミキサー」ドックに、手順2で追加したVC音声ソース(例:
この方法の利点
- ゲーム音声やデスクトップ音声全体をキャプチャしつつ、VC音声だけを分離して制御できます。
- 仮想オーディオデバイスなどの追加ツールが不要な場合が多いです。
- VC相手との会話を自分自身はヘッドホンで聞きつつ、配信には乗せないという設定が容易です。
注意点
- この機能はまだベータ版であり、環境によっては不安定な場合があります。
- アプリケーションによっては、この方法で音声をうまくキャプチャできない場合があります。
- VC相手の声だけでなく、VCアプリケーションの通知音なども同時にキャプチャされることがあります。
VC音声を配信に乗せない別の方法(補足)
アプリケーション音声キャプチャがうまくいかない場合や、より高度な設定を行いたい場合は、仮想オーディオデバイス(例: Voicemeeter)を利用する方法があります。これは、PC内の複数の音声ストリームを仮想的にルーティングし、特定の音声だけをOBSに送る技術ですが、設定が複雑になるため初心者向けの記事としてはここでは詳細を割愛します。基本的な設定でVC音声を分離したい場合は、前述の「アプリケーション音声キャプチャ」を試すことをお勧めします。
VC音声に関するトラブルシューティング
- VC音声が配信に全く乗らない/自分にも聞こえない:
- PCのサウンド設定で、VCアプリケーションの出力デバイスが正しく設定されているか確認します。
- OBS Studioの音声ミキサーで、VC音声ソースがミュートになっていないか、音量が小さすぎないか確認します。
- 「アプリケーション音声キャプチャ」を使用している場合、対象アプリケーションが正しく選択されているか、VCアプリが起動しているか確認します。
- VC音声が二重に聞こえる:
- VC音声を個別のソースとしてキャプチャしているにも関わらず、デスクトップ音声やゲーム音声ソースにもVC音声が含まれてしまっている可能性があります。デスクトップ音声ソースの設定を確認するか、「アプリケーション音声キャプチャ」以外のデスクトップ音声をキャプチャするソースをミュートすることを検討します。
- VCアプリケーションの出力設定が、自身が聞いているデバイスとOBSがキャプチャしているデバイスの両方になっている可能性があります。
- VC音声にノイズが入る:
- VC相手のマイクや環境に問題がある可能性があります。
- 自身のPC環境でグラウンドループなどが発生している可能性も考えられます。オーディオインターフェースやノイズ対策グッズが有効な場合もありますが、まずはVC相手とご自身の音声入力設定を見直します。
まとめ
ゲーム配信におけるボイスチャット音声の扱いは、配信の品質とプライバシーに関わる重要な設定です。配信にVC音声を乗せるか乗せないかを明確にし、OBS Studioの「アプリケーション音声キャプチャ (ベータ)」機能を活用することで、VC音声だけを他の音声と分離して適切に制御することが可能です。
この記事で解説した手順を参考に、ご自身の配信環境に合わせてVC音声の設定を行ってみてください。適切な設定を行うことで、視聴者にとっても快適で分かりやすい配信を提供できるようになります。次のステップとして、テスト配信を行い、実際にVC音声が意図した通りに聞こえるかを確認することをお勧めします。