OBS Studioでゲーム配信のパフォーマンスを最適化する設定方法
ゲーム配信を快適に行うためには、使用するPCの性能だけでなく、配信ソフトウェアであるOBS Studioの設定も非常に重要です。特に、PCへの負荷を適切に管理することは、配信中の映像のカクつきや音声の途切れを防ぎ、視聴者にとって快適な視聴環境を提供するために不可欠です。
このガイドでは、OBS Studioでゲーム配信を行う際に、パフォーマンスを最適化し、安定した配信を実現するための具体的な設定方法について解説します。ご自身のPC環境に合わせて設定を調整する際の参考としてください。
パフォーマンス最適化の重要性
ゲーム配信は、PCにとって非常に負荷の高い処理です。ゲームの描画、OBS Studioによる映像・音声の取り込みとエンコード、そしてインターネットへのデータ送信といった複数の処理が同時に行われます。PCの処理能力がこれらの処理に追いつかない場合、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 配信画面のカクつきやフレームレートの低下
- 音声の途切れやノイズ
- ゲーム自体の動作が重くなる
- OBS Studioの動作が不安定になり、最悪の場合はクラッシュする
これらの問題を回避し、安定した高品質な配信を行うためには、OBS Studioの設定を通じてPCへの負荷を適切に調整することが求められます。
パフォーマンスに影響する主なOBS設定項目
OBS Studioには様々な設定項目がありますが、特にパフォーマンスに大きく影響するのは以下の項目です。
- 出力設定 (配信) - エンコーダー: 映像を圧縮・変換する方式を決定します。CPUを使う「x264」と、GPU(グラフィックボード)を使う「NVIDIA NVENC」や「AMD VCE/AMF」などがあります。
- 出力設定 (配信) - 解像度: 配信する映像の解像度(画面のきめ細かさ)です。高解像度ほど負荷が高まります。
- 出力設定 (配信) - フレームレート: 1秒間に表示する画像の枚数です。数値が高いほど滑らかな映像になりますが、負荷が高まります。
- 出力設定 (配信) - ビットレート: 1秒間に送信するデータ量です。高いほど画質は向上しますが、PCのエンコード負荷およびインターネット回線への負荷が高まります。
- 出力設定 (配信) - プリセット/エンコード設定: エンコーダーの品質と速度のバランスを設定します。速度を優先すると負荷は下がりますが画質は低下し、品質を優先すると負荷は上がりますが画質は向上します。
- 映像設定 - 縮小フィルター: 配信解像度が基準解像度より低い場合に、映像を縮小する際の方法です。高品質なフィルターほど負荷が高まります。
パフォーマンス最適化のための具体的な設定調整
ここでは、上記の項目を中心に、パフォーマンスを最適化するための具体的な調整方法を解説します。
1. エンコーダーの選択
エンコーダーは、パフォーマンスに最も大きな影響を与える設定の一つです。
- CPU (x264): CPUの処理能力を使用します。高品質なエンコードが可能ですが、CPUへの負荷が非常に高くなります。ゲーム自体もCPUを多用するため、一般的なゲーミングPCではCPU負荷が高くなりすぎてしまう可能性があります。
- GPU (NVIDIA NVENC / AMD VCE/AMF): グラフィックボードに搭載された専用のエンコード機能を使用します。CPUの負荷を大幅に軽減できます。最近のグラフィックボードであれば、高品質なエンコードが可能で、ゲームの動作に影響を与えにくいというメリットがあります。
推奨: 多くの環境では、GPUエンコーダー(NVIDIA NVENCやAMD VCE/AMF)を選択することが推奨されます。これにより、ゲームと配信処理で負荷が分散され、全体のパフォーマンスが安定しやすくなります。お使いのグラフィックボードに対応したエンコーダーを選択してください。
設定場所: ファイル
> 設定
> 出力
> 配信
タブ > エンコーダー
2. 解像度とフレームレートの調整
配信する解像度とフレームレートを下げることで、PCのエンコード負荷を軽減できます。
- 基準(キャンバス)解像度: OBSで編集を行う際の画面サイズです。通常は使用しているモニターの解像度(例: 1920x1080)に設定します。
- 出力(配信)解像度: 実際に視聴者へ届けられる映像のサイズです。
PCの性能やインターネット回線速度にもよりますが、一般的な配信プラットフォームでは「1920x1080 (Full HD) 60fps」または「1280x720 (HD) 60fps」が多く用いられます。
PCへの負荷が高いと感じる場合は、まず出力解像度を「1280x720」に下げることを検討してください。また、フレームレートを「30fps」に下げることでも負荷は軽減されます。動きの激しいゲームでは60fpsが望ましいですが、パフォーマンス優先であれば30fpsも有効な選択肢です。
設定場所: ファイル
> 設定
> 映像
> 出力 (スケーリング) 解像度
および 共通FPS値
3. ビットレートの調整
ビットレートは、画質とパフォーマンス(エンコード負荷、回線負荷)のバランスを取る重要な要素です。ビットレートを高くすると画質は向上しますが、エンコード処理に必要な計算量が増え、また送信するデータ量が増加します。
PCのエンコード負荷が高いと感じる場合は、ビットレートを少し下げることで改善される場合があります。ただし、ビットレートを下げすぎると画質が著しく劣化するため注意が必要です。
推奨されるビットレートの目安は、配信プラットフォームや解像度によって異なります。例えば、YouTubeやTwitchでは、1080p 60fpsの場合、4500~6000kbps程度が推奨されています。パフォーマンスに問題がある場合は、この範囲の下限値や、一つ下の解像度(720p)の推奨ビットレート(例: 2500~4000kbps)を参考に調整してください。
設定場所: ファイル
> 設定
> 出力
> 配信
タブ > ビットレート
4. エンコーダープリセット/エンコード設定の調整
GPUエンコーダーを使用している場合、「プリセット」や「エンコード設定」といった項目があることがあります。(例: NVIDIA NVENCの「プリセット」や「チューニング」)
これらの設定は、エンコード速度と画質のバランスを調整します。「高速」や「低遅延」といった設定は、エンコード処理を速く(=PCへの負荷を低く)行う代わりに画質がわずかに犠牲になる傾向があります。「高品質」といった設定は、画質を優先する代わりに負荷が高まります。
パフォーマンスに問題がある場合は、「高速」や「パフォーマンス」といった名前のプリセットを選択することで、負荷を軽減できる可能性があります。
設定場所: ファイル
> 設定
> 出力
> 配信
タブ > エンコーダー設定内の関連項目
5. 縮小フィルターの選択
出力(配信)解像度が基準(キャンバス)解像度より低い場合に適用されるフィルターです。
- バイキュービック (シャープなスケーリング、16サンプル): バランスが良い一般的な選択肢です。
- ランチョス (最もシャープなスケーリング、32サンプル): 最も高品質ですが、わずかに負荷が高まります。
- バイリニア (ぼやけたスケーリング、高速): 最も低負荷ですが、画質がかなり劣化します。
パフォーマンス優先であれば「バイキュービック」または「バイリニア」を選択肢に入れることができます。しかし、縮小フィルターによる負荷増加は他の設定項目(解像度、フレームレート、エンコーダー)に比べれば小さい場合が多いため、まずは他の項目を調整し、それでも改善しない場合に検討すると良いでしょう。一般的には「バイキュービック」で問題ありません。
設定場所: ファイル
> 設定
> 映像
> 縮小フィルター
その他のパフォーマンス対策
上記の設定調整に加え、以下の点もパフォーマンス維持に役立ちます。
- OBS Studioを管理者として実行する: Windowsの場合、OBS Studioのアイコンを右クリックし「管理者として実行」を選択することで、PCのリソースをより優先的に使用できるようになり、安定性が向上する場合があります。
- ゲーム側の設定を見直す: ゲーム側のグラフィック設定(解像度、画質オプションなど)を下げることで、ゲーム自体およびOBS Studioが使用できるPCリソースを増やすことができます。
- 不要なアプリケーションを閉じる: 配信中に不要なアプリケーション(ウェブブラウザの多数のタブ、動画再生ソフトなど)を閉じることで、PCのメモリやCPUリソースを解放し、OBS Studioやゲームに割り当てられるリソースを増やすことができます。
- ゲームキャプチャソースの設定: ゲームキャプチャソースの設定で、「ゲームのフック性能オーバーヘッドを軽減する」オプションを有効にすると、特定の環境でパフォーマンスが改善されることがあります。また、「サードパーティ製オーバーレイ(Steam, Discordなど)をキャプチャ」を無効にすると、互換性問題や負荷軽減につながる場合があります。
調整のステップと確認方法
設定を調整する際は、一度に多くの項目を変更するのではなく、一つの項目ずつ変更し、配信テストを行って効果を確認することをお勧めします。
- まずエンコーダーをGPUに設定可能か確認します。
- 次に、出力解像度やフレームレートを、目標より一段階低い設定(例: 1080p 60fps -> 720p 60fps または 1080p 30fps)に設定してテストします。
- 配信が安定しない場合、ビットレートを少し下げてみます。
- それでも改善が見られない場合は、エンコーダープリセットの変更や、ゲーム側の設定の見直しを行います。
OBS Studioの下部ステータスバーには、CPU使用率やドロップフレーム数(PC性能や回線速度不足で処理しきれなかったフレーム数)が表示されます。これらの情報を参考に、PCへの負荷が高すぎないか、配信が安定しているかを確認しながら設定を調整してください。ドロップフレームが多い場合は、PC性能または回線速度のどちらか、あるいは両方に問題がある可能性が高いです。
まとめ
OBS Studioのパフォーマンス最適化設定は、快適なゲーム配信を行う上で欠かせないステップです。特にPCの性能に不安がある場合や、配信中にカクつきや音切れが発生する場合は、本記事で解説したエンコーダー、解像度、フレームレート、ビットレートなどの設定を見直すことが有効です。
これらの設定は、お使いのPC環境やインターネット回線速度、配信するゲームによって最適なバランスが異なります。焦らず、一つずつ設定を変更し、実際にゲームをプレイしながら配信テストを行い、ご自身の環境にとって最も安定した設定を見つけてください。適切な設定を行うことで、視聴者の方々も楽しめる、より質の高いゲーム配信を実現できるでしょう。