OBS Studioでゲーム配信を始めるための基本設定:解像度、フレームレート、ビットレート解説
ゲーム配信を始めるにあたり、多くの方が利用する配信ソフトウェアがOBS Studioです。OBS Studioは非常に多機能である反面、設定項目が多く、初めて利用する際には戸惑うことがあるかもしれません。特に「配信設定」は、視聴者が快適に映像を見られるかどうか、あるいはご自身のインターネット回線やPCスペックに見合った配信ができるかどうかを左右する、非常に重要な項目です。
この記事では、OBS Studioを使用してゲーム配信を行うために不可欠な、基本的な配信設定について解説します。解像度、フレームレート、ビットレートといった主要な項目を中心に、それぞれがどのような意味を持ち、どのように設定すれば良いのかを具体的な手順とともにご紹介します。これらの設定を理解し適切に行うことで、スムーズなゲーム配信の第一歩を踏み出すことができるでしょう。
OBS Studioの配信設定を開く手順
まず、OBS Studioを開き、設定画面にアクセスします。
- OBS Studioのウィンドウ下部にある「コントロール」ドックの中から、「設定」ボタンをクリックします。
- 設定ウィンドウが表示されたら、左側のメニューから「配信」タブを選択します。
- さらに、左側のメニューから「出力」タブを選択します。配信に関する主要な設定の多くは、この「出力」タブで行います。
「配信」タブでの基本的な設定
「配信」タブでは、主にどの配信サービスに接続するかを設定します。
- サービス: 利用したい配信プラットフォームを選択します。例えば、YouTube、Twitch、Facebook Liveなどが選択肢として表示されます。ご自身が配信を行いたいサービスを選んでください。
- サーバー: 通常は「Auto」を選択しておけば、選択したサービスに最適なサーバーが自動的に選ばれます。特別な理由がない限り、変更する必要はありません。
- ストリームキー: これは、選択した配信サービスから発行される、ご自身のチャンネル専用のコードです。各配信サービスのウェブサイトで取得し、ここに正確に入力することで、OBS Studioがご自身のチャンネルに映像を送れるようになります。ストリームキーは非常に重要な個人情報ですので、他人に見られないよう厳重に管理してください。
「出力」タブ(出力モード:シンプル)での配信設定解説
初めてOBS Studioを使用する場合、「出力」タブの上部にある「出力モード」が「シンプル」になっていることを推奨します。「シンプル」モードでも、ゲーム配信に必要な基本的な設定は十分に可能です。
映像ビットレート
映像ビットレートは、1秒間に送信する映像データ量をキロビット毎秒(kbps)で指定する項目です。この値が大きいほど映像は高画質になりますが、必要なインターネット回線の上り速度も速くなります。ご自身のインターネット回線の上り速度や、配信先のプラットフォームが推奨するビットレートを考慮して設定することが重要です。
- 設定の目安:
- インターネット回線の上り速度が十分に速い場合(例:30Mbps以上)、推奨されるビットレートは3,000 kbps ~ 6,000 kbps程度です。
- 配信プラットフォームの推奨値も確認してください。例えば、YouTubeやTwitchでは、一般的に3,000 kbps ~ 6,000 kbpsが推奨されています。
- 回線速度に対してビットレートが高すぎると、映像がカクついたり、視聴者がスムーズに視聴できなくなったりする可能性があります。
エンコーダー
エンコーダーは、キャプチャーした映像データを圧縮して配信に適した形式に変換する役割を担います。エンコーダーにはいくつかの種類があり、主に以下のものが利用されます。
- ソフトウェア (x264): PCのCPUを使用してエンコードを行います。高品質なエンコードが可能ですが、CPUに高い負荷がかかります。高性能なCPUを搭載しているPCに適しています。
- ハードウェア (NVIDIA NVENC, AMD VCE, Intel Quick Sync Videoなど): PCに搭載されているグラフィックボード(GPU)や内蔵グラフィックスに搭載された専用のハードウェア機能を使用してエンコードを行います。CPU負荷を低く抑えられるため、ゲームをしながらの配信に適しています。多くの初心者には、ハードウェアエンコーダー(特にNVIDIA NVENCやIntel Quick Sync Video)の利用が推奨されます。
ご自身のPC環境で使用可能なエンコーダーが表示されますので、ゲームの動作に影響を与えにくいハードウェアエンコーダーを選択することが一般的です。
音声ビットレート
音声ビットレートは、1秒間に送信する音声データ量を指定します。映像ビットレートほど大きな影響はありませんが、一般的には128 kbpsまたは160 kbpsが使用されます。特に理由がなければ、デフォルト値または160 kbpsを選択しておけば問題ありません。
配信サービスのエンコーダー設定を適用する
この項目にチェックを入れると、選択した配信サービスが推奨するエンコーダー設定(ビットレートの上限やキーフレーム間隔など)が自動的に適用される場合があります。初心者のうちはチェックを入れておくことで、プラットフォーム側の推奨設定に合わせやすくなります。
「出力」タブ(出力モード:シンプル)での映像設定解説
同じ「出力」タブの、配信設定の下にある「映像」セクションでは、配信する映像の品質に関する設定を行います。
配信の解像度スケール
これは、実際に視聴者に届けられる映像の解像度です。通常、キャプチャーするゲーム画面の解像度(基準解像度)よりも低い解像度を選択することで、PCへの負荷や必要なビットレートを抑えることができます。
- 設定の目安:
- 高画質で配信したい場合は、基準解度と同じ 1920x1080 (Full HD) を選択します。これには十分な回線速度とPCスペックが必要です。
- PCへの負荷を減らしたい場合や、回線速度に不安がある場合は、1280x720 (HD) を選択することが一般的です。多くの配信サービスで推奨されており、スマートフォンなどで視聴する際には十分な品質です。
FPS
FPS (Frames Per Second) は、1秒間に表示するフレーム(コマ)数です。この値が大きいほど、映像が滑らかに見えます。
- 設定の目安:
- 一般的なゲーム配信では 60 fps または 30 fps が選択されます。
- 動きの激しいゲームや、より滑らかな映像を届けたい場合は 60 fps を推奨します。ただし、60 fpsでの配信は、30 fpsと比較して約2倍のデータ量とPC処理能力が必要になります。
- PCスペックや回線速度に不安がある場合、または動きが比較的少ないゲームを配信する場合は 30 fps を選択することで、負荷を軽減できます。
推奨設定の選択と調整について
ここまで解説した各設定は、ご自身のPCスペック、インターネット回線速度、そして主に配信するゲームの種類によって最適なバランスが異なります。
- PCスペックの確認: 特にエンコーダー選びやFPS設定において、CPUやGPUの性能は重要です。使用しているPCの仕様を確認しましょう。
- インターネット回線速度の確認: 事前に回線速度測定サイトなどで上り(アップロード)速度を測定し、安定した速度が出ているかを確認します。ビットレート設定の重要な判断基準となります。
- テスト配信: 実際の設定で配信を開始する前に、誰にも公開しない限定公開や非公開でのテスト配信を行うことを強く推奨します。これにより、映像や音声に問題がないか、PCへの負荷はどうかなどを確認できます。問題が見つかった場合は、ビットレートを下げる、FPSを30にする、エンコーダーを変更するといった調整を行います。
まとめ
OBS Studioの配信設定は、ゲーム配信の品質を決定する基礎となります。この記事で解説した解像度、フレームレート、ビットレート、エンコーダーといった基本的な項目を理解し、ご自身の環境に合わせて適切に設定することが快適な配信には不可欠です。
これらの設定を丁寧に行うことで、視聴者にとって見やすく、ご自身にとっても安定した配信環境を構築することができます。今回ご紹介した設定を参考に、ぜひスムーズなゲーム配信のスタートを切ってください。設定に慣れてきたら、さらに詳細な設定項目についても調べてみると良いでしょう。
配信設定の次には、実際にゲーム画面をOBS Studioに取り込んだり、マイク音声を調整したりといったステップが必要になります。これらの設定についても、本サイトの他の記事で解説していますので、あわせてご参照ください。