PCゲーム配信を快適に行うためのPC設定とOBS設定
はじめに
ゲーム配信に興味をお持ちいただき、ありがとうございます。このサイトは、ゲーム配信をこれから始めたいと考えている方、特に機材選びや設定に不安を感じる初心者の方に向けて、役立つ情報を提供しています。
ゲーム配信には様々な種類がありますが、PCゲームの配信は特に人気があります。しかし、PCゲーム配信は、家庭用ゲーム機の配信とは異なり、ゲーム自体の動作と配信処理の両方を一台のPCで行うことが多いため、PCへの負荷が高くなりやすいという特徴があります。
「配信画面がカクつく」「ゲームの動作が重くなる」「音声が途切れる」といった問題は、PCゲーム配信でよくあるトラブルです。これらの問題は、PCの設定や配信ソフト(OBS Studioなど)の設定が適切でない場合に発生しやすいため、事前の準備と設定が重要となります。
この記事では、PCゲームをスムーズに配信するために、PC側で考慮すべき設定と、OBS Studio側で確認・調整すべき設定について詳しく解説します。これらの設定を適切に行うことで、視聴者の方々が快適に視聴でき、ご自身もストレスなく配信を続けられる環境を整えることが可能になります。
PCゲーム配信で直面しやすい課題
PCゲーム配信を始める際、特に初心者の方が直面しやすい課題として、主に以下の点が挙げられます。
- PCへの高い負荷: PCゲームを高品質な設定でプレイしながら、同時に配信エンコード(映像や音声を圧縮して配信に適した形式に変換する処理)を行うには、PCのCPUやGPUに大きな負荷がかかります。PCのスペックが不足している場合や、設定が最適化されていない場合、ゲームや配信がカクついたり、最悪の場合は配信が停止したりすることがあります。
- 設定の複雑さ: PCゲームの設定、Windowsの設定、そしてOBS Studioなどの配信ソフトの設定と、調整すべき箇所が多岐にわたります。それぞれの設定が互いに影響し合うため、どこをどのように調整すれば良いか判断が難しく感じることがあります。
- 予期せぬトラブル: 設定ミスだけでなく、PCのバックグラウンドで動作する他のソフトウェアの影響や、ネットワークの問題など、様々な要因でトラブルが発生する可能性があります。
これらの課題に対して、一つずつ丁寧に対処していくことが、快適なPCゲーム配信への近道となります。
快適なPCゲーム配信のための基本的な考え方
快適なPCゲーム配信を実現するためには、「ゲームを快適にプレイするための設定」と「配信を安定して行うための設定」のバランスを取ることが重要です。
一般的に、ゲームの画質や設定を上げるとPCへの負荷が高まります。同様に、配信の画質(解像度やフレームレート)やビットレートを上げると、エンコード処理やネットワークに負荷がかかります。
どちらかの設定を優先しすぎると、もう一方に悪影響が出ます。例えば、ゲームの画質を最高設定にしたまま配信設定も高くすると、PCの処理能力を超えてしまい、ゲームも配信もカクつくという結果になりかねません。
したがって、ご自身のPCのスペックやインターネット回線の速度を踏まえ、ゲーム内設定、Windows設定、そしてOBS Studio設定を総合的に調整し、PC全体にかかる負荷を管理することが快適な配信環境を構築する上で不可欠です。
PC側の設定最適化
まず、配信に使用するPC自体を、ゲームと配信処理に適した状態に最適化します。
1. ゲーム内設定の見直し
プレイするゲーム自体のグラフィック設定を見直すことは、PC負荷を軽減する上で最も直接的な方法の一つです。
- グラフィック品質: シェーダー、影、テクスチャ、エフェクトなどの設定を下げることで、GPUへの負荷を大幅に減らすことができます。見た目の品質とのトレードオフになりますが、配信の安定性を優先する場合は有効な手段です。
- 解像度: ゲームの解像度を配信解像度と同じか、あるいは一段階下げることも検討できます。
- フレームレート上限: ゲームのフレームレートに上限を設定することで、GPUが過剰な処理を行わないように制御できます。例えば、配信フレームレートを60fpsとする場合、ゲーム側のフレームレートも120fpsなどに上限を設定すると、不必要な負荷を軽減できます。
- 垂直同期 (Vsync): 画面のティアリング(描画のずれ)を防ぐ機能ですが、入力遅延が増える場合や、PC負荷に影響する場合もあります。配信の安定性を優先する場合はオフを試す価値があります。
ゲームの設定画面には、PCへの負荷を示す項目(CPU使用率、GPU使用率など)が表示される場合が多いです。これらの情報を参考にしながら、実際にゲームを少しプレイしてみて、どの設定がPCにどの程度の影響を与えるかを確認してください。
2. Windows側の設定
Windowsのいくつかの設定も、配信パフォーマンスに影響を与える可能性があります。
- ゲームモード: Windows 10/11には「ゲームモード」機能があります。これを有効にすると、ゲームプレイ中のシステムリソースがゲームに優先的に割り当てられます。配信ソフトにも恩恵がある場合があるため、オンに設定しておくことを推奨します。
- 設定方法: Windowsの設定を開き、「ゲーム」→「ゲームモード」を選択し、オンになっていることを確認します。
- 不要な常駐ソフトウェアの停止: ゲーム中や配信中にバックグラウンドで動作する他のソフトウェア(アップデートプログラム、クラウドストレージの同期、通知機能など)は、予期せぬタイミングでPCリソースを消費し、ゲームや配信のカクつきの原因となることがあります。配信中は、必要なソフトウェア以外は終了させておくことを推奨します。
- 通知の停止: Windowsや他のアプリケーションからの通知が配信中に表示されるのを防ぐだけでなく、通知処理による軽微な負荷も回避できます。
- 設定方法: Windowsの設定を開き、「システム」→「集中モード」(または「フォーカス アシスト」)を設定します。ゲーム中や全画面表示時に自動的に有効になるように設定できます。
- 電源プラン: 高パフォーマンス設定になっていることを確認します。
- 設定方法: コントロールパネルを開き、「電源オプション」を選択します。「高パフォーマンス」または「究極のパフォーマンス」(表示される場合)を選択します。ノートPCの場合は、電源に接続した状態で設定してください。
3. グラフィックドライバーの最適化
NVIDIAやAMDなどのグラフィックカードメーカーは、定期的にドライバーソフトウェアのアップデートを提供しています。最新のドライバーは、ゲームのパフォーマンス向上や安定性向上に貢献することが多いため、常に最新の状態に保つことを推奨します。
また、グラフィックドライバーの設定画面(NVIDIAコントロールパネルやRadeon Software)には、ゲームごとに詳細な設定を行う機能があります。特定のゲームでパフォーマンスが出ない場合や、配信との相性が悪い場合に、これらの設定を調整することで改善されることがあります。例えば、垂直同期の設定や、低遅延モードの設定などがあります。
OBS Studio側の設定最適化
次に、OBS Studioの設定を、PCのスペックとインターネット回線速度に合わせて最適化します。
1. エンコーダーの選択
配信の映像を圧縮する「エンコーダー」の選択は、PCへの負荷に最も大きく影響する要素の一つです。
- ハードウェアエンコーダー (NVENC, AMD VCE/VCE): NVIDIA GeForceシリーズに搭載されているNVENCや、AMD Radeonシリーズに搭載されているVCE/VCEは、グラフィックカードに内蔵された専用のエンコード回路を使用します。これにより、CPUの負荷を大幅に軽減できます。画質はCPUエンコードに比べてわずかに劣ると言われることもありますが、近年のハードウェアエンコーダーは高性能化しており、多くのユーザーにとって十分な品質を提供します。PCゲーム配信では、ゲームの描画で既にGPUを使用しているため、GPU内蔵のエンコーダーを使うことで、CPUリソースをゲームに多く割り当てることができ、ゲームと配信の両方を安定させやすいというメリットがあります。
- ソフトウェアエンコーダー (x264): CPUを使用してエンコードを行います。高品質な映像を得やすい反面、非常にCPUパワーを要求します。高性能なCPUを搭載しているPCで、かつゲームがあまりCPU負荷をかけない場合などに適していますが、PCゲーム配信ではCPUへの負荷が高くなりやすいため、多くの場合ハードウェアエンコーダーが推奨されます。
ご自身のPCに搭載されているグラフィックカードを確認し、利用可能なハードウェアエンコーダーがあれば、そちらを選択することを強く推奨します。
- OBS Studioの「設定」→「出力」タブで、出力モードを「詳細」にし、「配信」タブのエンコーダーで「ハードウェア (NVENC)」や「ハードウェア (AMD)」といった選択肢があるか確認してください。
2. 解像度とフレームレート
配信する映像の解像度とフレームレートは、視聴者の視聴体験に直結しますが、PC負荷と回線速度にも影響します。
- 出力(配信)解像度: 視聴者が実際に目にする映像の解像度です。一般的には1920x1080 (フルHD) または 1280x720 (HD) が使用されます。PCの処理能力や回線速度に自信がない場合は、720pから始めるのが無難です。
- 縮小フィルター: 配信解像度を基準解像度(通常はPCモニターの解像度)より小さくする場合に適用されるフィルターです。高品質なフィルターほどCPU負荷は高まりますが、映像の見た目が滑らかになります。一般的には「ランチョス (シャープ化されたスケーリング, 36サンプル)」が推奨されますが、PC負荷が高い場合は「バイキュービック (シャープ化されたスケーリング, 16サンプル)」などに下げることも検討します。
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FPS共通値: 1秒間に何フレームの映像を配信するかを示します。動きの速いゲームの場合は60fpsが望ましいですが、PC負荷と回線速度を考慮して30fpsを選択することもあります。多くのプラットフォームで60fps配信が一般的になっていますが、PCスペックや回線に不安がある場合は30fpsから試すのが賢明です。
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OBS Studioの「設定」→「映像」タブで設定します。
3. ビットレート設定
ビットレートは、1秒あたりに送信するデータ量を示す値です。ビットレートが高いほど映像の品質は向上しますが、より高速なインターネット回線が必要になり、PCのエンコード負荷もわずかに高まります。
- 目標値: 配信プラットフォームごとに推奨されるビットレートがあります(例: Twitch, YouTube)。ご自身のインターネット回線(特にアップロード速度)が、その推奨ビットレートを安定して供給できるかを確認することが重要です。インターネット回線速度の測定は、Ookla Speedtestなどのサイトで簡単に確認できます。アップロード速度の実測値の7割~8割程度を目安にビットレートを設定するのが安全策です。
- 設定方法: OBS Studioの「設定」→「出力」タブ(出力モード「詳細」)の「配信」タブで、ビットレートを設定します。
ビットレートが低すぎると映像がブロックノイズだらけになったり、動きの速いシーンで崩れたりします。高すぎると、視聴者側でバッファリングが発生したり、自身の配信が不安定になったりします。適切なビットレートの設定は、安定した高品質配信のために非常に重要です。
4. 配信負荷軽減のためのその他のOBS設定
- プレビューの無効化: OBS Studioのメインウィンドウに表示される配信プレビューは、PCリソースを消費します。配信を開始したら、プレビューを右クリックして「プレビューを無効にする」を選択することで、PC負荷をわずかに軽減できます。
- ソースの管理: 不要なソース(映像キャプチャ、画像など)は削除するか、非表示にすることで、OBS Studioの処理負荷を減らすことができます。
- テーマの変更: シンプルなOBSテーマを使用することで、インターフェース描画にかかる負荷を減らせる場合があります。
PC設定とOBS設定の連携と調整
PCゲーム配信における設定の最適化は、一度行えば終わりではありません。ゲームの種類や、PCのハードウェア構成、ドライバーのバージョンなどによって最適な設定は変化する可能性があります。
設定を行った後は、実際にゲームを起動し、OBS Studioで配信または録画をしながら、PCのパフォーマンスを監視することが重要です。
- OBS Studioの統計情報: OBS Studioのウィンドウ下部にあるステータスバーや、「表示」メニューから「統計情報」を開くことで、エンコードの負荷(スキップされたフレームやエンコード過負荷の割合)、フレームレート、CPU使用率などの情報をリアルタイムで確認できます。ここで「エンコード過負荷」が表示される場合は、PCの処理能力に対して設定が高すぎることを示しています。
- タスクマネージャー: Windowsのタスクマネージャー(Ctrl + Shift + Escで起動)で、CPU、GPU、メモリの使用率を確認します。ゲーム、OBS Studio、その他のプロセスがどの程度リソースを消費しているかを確認し、ボトルネックとなっている箇所を特定するのに役立ちます。
- ゲーム内のフレームレートカウンター: 多くのゲームにはフレームレートを表示する機能があります。配信中も安定したフレームレートでゲームが動作しているかを確認します。
これらの情報を見ながら、もしカクつきやパフォーマンスの問題が発生している場合は、以下の手順で設定を調整します。
- まず、ゲーム内のグラフィック設定を一段階下げてみます。
- 次に、OBS Studioの映像設定で、FPSを60fpsから30fpsに下げてみます。
- それでも改善しない場合は、OBS Studioの出力解像度を1080pから720pに下げてみます。
- エンコーダーがx264になっている場合は、ハードウェアエンコーダーに変更可能か確認します。
- OBS Studioのビットレートを、回線速度に対して余裕を持った値に再設定します。
- PCのバックグラウンドで動作している不要なソフトを完全に終了させます。
これらの調整を一つずつ試しながら、パフォーマンスが改善するかどうかを確認してください。設定を変更するたびに、短時間でも良いのでゲームをプレイし、OBS Studioの統計情報やタスクマネージャーで負荷状況を確認するプロセスを繰り返すことを推奨します。
テスト配信の重要性
設定が完了したら、実際に配信プラットフォームで「テスト配信」を行うことを強く推奨します。テスト配信は、実際の視聴者には公開されずに配信の品質を確認できる機能です(プラットフォームによって機能の名称や設定方法が異なります)。
テスト配信を行うことで、設定どおりに映像や音声が配信されているか、カクつきや遅延はないか、ビットレートは安定しているかなどを、実際の配信環境で確認できます。テスト配信の具体的な手順や確認すべき項目については、別途詳細な記事(ゲーム配信前に必ず行うべきテスト配信のやり方とチェックリスト ※該当記事への内部リンクを想定)で解説していますので、そちらも併せてご確認ください。
まとめ
PCゲーム配信をスムーズに始めるためには、単に機材を揃えるだけでなく、PCと配信ソフト(OBS Studio)の設定を適切に行うことが不可欠です。特に、PCゲームはPCへの負荷が高くなりやすいため、ゲーム内設定、Windows設定、そしてOBS Studio設定を総合的に見直し、PC全体のパフォーマンスバランスを取る意識が重要です。
この記事で解説した以下のポイントを確認・設定することで、カクつきや遅延といった一般的な問題を回避し、快適な配信環境に近づけることができます。
- ゲーム内グラフィック設定の見直し
- Windowsのゲームモードや不要ソフト停止
- 最新グラフィックドライバーの利用
- OBS Studioでのハードウェアエンコーダーの選択
- PCスペックと回線速度に合わせた解像度、フレームレート、ビットレート設定
- OBS Studioのその他の負荷軽減設定
- 設定後のパフォーマンス監視と調整
これらの設定作業は、最初は少し複雑に感じられるかもしれませんが、一つずつ丁寧に進めれば、必ず理解し、実行することができます。設定が完了したら、必ずテスト配信を行って、実際の配信環境での確認を忘れないでください。
快適な設定で、楽しいPCゲーム配信ライフをスタートしましょう。もし設定中に不明な点や問題が発生した場合は、関連する他の記事や、オンライン上の情報を参考に、一つずつ解決していくことをお勧めします。