PC性能別に解説!ゲーム配信で安定した品質を実現するOBS設定ガイド
ゲーム配信を始める際、PCの性能は配信の品質と安定性に大きく影響します。高画質で滑らかな映像を届けたいと思っても、お使いのPCの性能に対して高すぎる設定を選ぶと、配信がカクついたり、ゲームの動作が不安定になったりする可能性があります。
この記事では、お使いのPCの性能レベルに合わせて、OBS Studioでどのような配信設定を目指すべきか、具体的な解像度、フレームレート、ビットレート、エンコーダーの設定例とともに解説します。この記事を読むことで、ご自身のPCで可能な範囲で最も快適かつ安定したゲーム配信を行うための知識を得ることができます。
ゲーム配信におけるPC性能の役割
ゲーム配信では、PCはゲームの実行、ゲーム映像の取り込み、映像・音声のエンコード(圧縮)、そして配信サーバーへの送信といった複数の処理を同時に行います。これらの処理はPCのCPU、GPU、メモリなどに負荷をかけます。
特に、ゲームの映像を配信可能なデータ形式に変換する「エンコード」処理は、PC性能の中でもCPUまたはGPUに大きな負担をかけます。このエンコード処理を効率的に行い、安定したフレームレートで映像を配信に乗せることが、視聴者にとって快適な配信体験を提供するために不可欠です。
PCの性能が不足している場合、エンコード処理が追いつかず、映像が飛んだり(スキップフレーム)、全体の動作が重くなったりします。適切な配信設定を選ぶことは、お使いのPCのリソースを最大限に活用し、安定した配信を実現するために非常に重要です。
ご自身のPC性能レベルを把握する
まずは、お使いのPCがどの程度の性能を持つかを大まかに把握します。ゲーム配信において特に重要なのはCPUとGPUです。
PCの性能は多様ですが、ここでは分かりやすくするために、ゲーム配信におけるおおよそのPC性能を以下の3つのレベルに分類して解説します。
- エントリーレベル: 古めのモデルや、オフィス用途を主な目的としたPCに多い性能帯です。最新の重量級ゲームを快適にプレイしつつ高画質配信を行うのは難しい場合があります。
- ミドルレンジ: 数年前に購入したゲーミングPCや、比較的新しい一般的な性能のPCが該当します。多くのゲームをプレイしつつ、標準的な画質での配信が可能です。
- ハイエンド: 最新または比較的新しい高性能なゲーミングPCが該当します。高解像度・高フレームレートでのゲームプレイと、高画質・高フレームレートでの配信を両立しやすい性能です。
ご自身のPCの正確なスペックが分からない場合でも、購入時期や主な使用目的からおおよそのレベルを推測できます。あるいは、タスクマネージャーなどでCPUやGPUの使用率を確認してみることも参考になります。
OBS Studioの主要な配信設定項目
OBS Studioで配信品質に関わる主な設定項目には、以下のものがあります。これらの設定は、配信の見た目だけでなく、PCにかかる負荷にも直接影響します。
- 解像度(出力・配信解像度): 配信される映像のサイズです。
1920x1080
(フルHD) が一般的ですが、1280x720
(HD) も広く使用されます。- 解像度が高いほど高画質になりますが、データ量が大きくなり、エンコード負荷も増大します。
- フレームレート(FPS): 1秒間あたりの映像のコマ数です。
60fps
または30fps
が一般的です。- フレームレートが高いほど映像が滑らかになりますが、データ量が大きくなり、エンコード負荷も増大します。動きの速いゲームでは60fpsが好まれます。
- ビットレート: 1秒間に送信するデータ量(KbpsまたはMbps)です。
- ビットレートが高いほど画質は向上しますが、必要な回線速度が速くなり、PCの負荷(特に送信処理)も増えます。配信サイトごとに推奨される上限や目安があります。
- 主要な配信サイトでは、一般的に2000 Kbpsから8000 Kbps程度の範囲がよく使われます。
- エンコーダー: 映像・音声データを圧縮する方式です。
x264
: CPUを使用してエンコードを行います。高品質な反面、CPUに高い負荷がかかります。プリセット(UltraFast, Veryfast, Faster, Fast, Medium, Slow, etc.)で速度と品質のバランスを調整します。NVIDIA NVENC
/AMD VCE
/Intel QSV
: GPUに搭載された専用のハードウェアエンコーダーを使用します。CPU負荷を抑えられますが、画質はx264に比べて劣る場合があり、GPU性能にも依存します。多くのゲーミングPCにはこれらのハードウェアエンコーダーが搭載されています。
PC性能レベル別の推奨OBS設定例
ここからは、前述のPC性能レベルに合わせて、推奨されるOBS設定の目安をご紹介します。これはあくまで一般的な目安であり、プレイするゲームの種類(軽負荷か重負荷か)、同時に起動している他のソフトウェア、個別のPCパーツの性能によって最適な設定は変動します。必ずテスト配信を行って調整してください。
エントリーレベルPCの場合
ゲームプレイ自体の負荷も考慮する必要があるため、配信設定は控えめにするのが現実的です。
- 目標品質: 解像度
1280x720
、フレームレート30fps
を安定して配信することを目指します。 - 推奨設定:
- 解像度: 出力(配信)解像度を
1280x720
に設定します。 - フレームレート:
30fps
に設定します。 - エンコーダー: 可能であれば、GPUのハードウェアエンコーダー(
NVENC
またはQSV
)を選択します。CPU(x264
)を使用する場合は、プリセットをveryfast
やfaster
など、速度を優先する設定を選びます。 - ビットレート: 配信サイトの推奨上限内で、
2000 Kbps
から3000 Kbps
程度を目安にします。低すぎると画質が悪化し、高すぎると回線やPCの負荷が増えます。
- 解像度: 出力(配信)解像度を
- 追加の考慮事項:
- ゲーム側のグラフィック設定を下げて、PCの負荷を軽減することが非常に有効です。
- OBSのプレビュー画面を非表示にする、不要なソースを無効にするなど、OBS自体の負荷も可能な限り減らします。
ミドルレンジPCの場合
多くのゲームをプレイしながら、標準的なHDまたはフルHD画質での配信が可能です。60fps配信も視野に入ってきます。
- 目標品質: 解像度
1920x1080
または1280x720
、フレームレート60fps
を安定して配信することを目指します。 - 推奨設定:
- 解像度:
1920x1080
(フルHD) を試してみます。PCやゲームの負荷が高い場合は1280x720
に下げます。 - フレームレート:
60fps
を試してみます。安定しない場合は30fps
に下げます。 - エンコーダー: GPUのハードウェアエンコーダー(
NVENC
またはQSV
)が推奨されます。品質プリセットはQuality
やMax Quality
など、やや品質を重視する設定を試せます。CPU(x264
)を使用する場合は、プリセットをfast
やmedium
に設定し、CPU負荷を確認しながら調整します。 - ビットレート: 配信サイトの推奨上限内で、
3500 Kbps
から5000 Kbps
程度を目安にします。フルHD 60fpsを目指す場合は、より高いビットレートが必要になることもあります。
- 解像度:
- 追加の考慮事項:
- ゲームのグラフィック設定とOBS設定のバランスが重要です。両方とも高く設定しすぎると不安定になります。
- PCのリソースモニター(タスクマネージャーなど)でCPUやGPUの使用率を監視しながら設定を調整します。
ハイエンドPCの場合
多くのゲームで高画質・高フレームレートを維持しつつ、高画質・高フレームレート配信が十分に可能です。
- 目標品質: 解像度
1920x1080
、フレームレート60fps
を安定して配信することを標準とします。より高画質(例: 1440pや4K)や、x264エンコーダーでの高品質設定も視野に入ります(回線速度が十分にある場合)。 - 推奨設定:
- 解像度:
1920x1080
を標準とします。視聴者や配信サイトの対応状況、回線速度に応じてより高解像度も検討できます。 - フレームレート:
60fps
を選択します。 - エンコーダー: GPUのハードウェアエンコーダー(
NVENC
またはQSV
)を使用し、品質プリセットはMax Quality
を選択します。高性能なCPUを搭載している場合は、CPU(x264
)エンコーダーを使用し、プリセットをslow
など品質を重視する設定を試すことも可能です。 - ビットレート: 配信サイトの推奨上限内で、
5000 Kbps
から8000 Kbps
以上を設定します。高画質を目指すほど高いビットレートが必要になりますが、配信サイトや視聴者の回線速度も考慮が必要です。
- 解像度:
- 追加の考慮事項:
- PC性能に余裕があっても、回線速度が不足していると高ビットレートでの配信はできません。回線速度も重要な要素です。
- 必要以上に設定を高くしても、視聴側の環境で再生できない場合や、見た目の変化が小さい場合もあります。安定性を最優先に考えます。
OBS設定の手順
OBS Studioでの配信設定は、「設定」ウィンドウから行います。
- OBS Studioを開き、右下の「設定」ボタンをクリックします。
- 左側のメニューから「映像」を選択し、基本(キャンバス)解像度と出力(配信)解像度、共通FPS値を設定します。まずは基本解像度をゲーム画面の解像度や使用しているモニターの解像度に合わせ、出力解像度を目標品質に合わせて設定します。FPS値も目標に合わせて設定します。
- 左側のメニューから「出力」を選択します。「出力モード」を「詳細」に切り替えることで、より詳細な設定が可能になります。
- 「配信」タブを選択し、エンコーダー、ビットレートなどを設定します。エンコーダーはドロップダウンリストから選択します。ビットレートは指定の数値を入力します。使用するエンコーダーによっては、さらに品質プリセットなどの設定項目が表示されます。
設定後のテスト配信の重要性
どのようなPC性能レベルであっても、設定後は必ずテスト配信を行ってください。実際に配信を開始し、数分間、あるいは可能であれば10分〜30分程度、配信でプレイする予定のゲームをプレイしてみます。
テスト配信中に確認するべき主なポイントは以下の通りです。
- OBSのステータスバー: ウィンドウ下部のステータスバーに表示されるCPU使用率やフレームレート、スキップフレームの割合を確認します。CPU使用率が高すぎたり、スキップフレームが多く発生したりする場合は、設定が高すぎる可能性があります。
- 配信プラットフォームでの確認: 実際に配信されている映像を、別のデバイス(スマートフォンなど)で確認します。映像がカクついていないか、音声が途切れていないかなどを確認します。
- ゲームの動作: ゲームプレイ中に遅延やカクつきが発生していないか確認します。
テスト配信で問題が発生した場合は、設定を見直します。具体的には、以下の順序で設定を下げていくことを検討します。
- ビットレートを下げる。
- フレームレートを60fpsから30fpsに下げる。
- 出力解像度をフルHD (1920x1080) からHD (1280x720) に下げる。
- エンコーダーの品質プリセットを下げるか、CPUエンコーダーの場合は速度優先のプリセットに変更する。
- ゲーム側のグラフィック設定を下げる。
これらの調整を段階的に行い、安定した配信が可能な設定を見つけてください。
まとめ
ゲーム配信におけるOBS設定は、お使いのPC性能と深く関連しています。ご自身のPCがおおよそどの程度の性能を持つかを把握し、それに応じた適切な配信設定(解像度、フレームレート、ビットレート、エンコーダー)を選択することが、安定して視聴者の方に快適な映像を届けるための第一歩です。
高価な機材を揃えなくても、お手持ちのPCの性能を理解し、OBSの設定を適切に行うことで、十分にゲーム配信を始めることは可能です。この記事で解説したPC性能別の推奨設定を参考に、まずはテスト配信を実行し、ご自身の環境で最も安定した設定を見つけて、ゲーム配信を楽しんでください。