ゲーム配信を始めるためのPCスペック:失敗しない選び方と推奨目安
ゲーム配信にご興味をお持ちいただき、ありがとうございます。
ゲーム配信を始めるにあたり、どのようなPCを用意すれば良いのか迷われる方は少なくありません。PCはゲームをプレイし、その映像や音声を処理してインターネットを通じて配信するという、一連の作業の中心となる機材です。PCのスペックが不足していると、ゲームがスムーズに動かなかったり、配信映像がカクついたり、最悪の場合は配信自体ができなかったりする可能性があります。
この記事では、ゲーム配信を始めるために必要なPCの基本的な構成要素とその役割、そして初心者の方が失敗しないためのPCスペックの選び方と推奨目安について解説します。ご自身の状況に合わせて、適切なPCを選ぶための一助となれば幸いです。
ゲーム配信に必要なPCの構成要素と役割
ゲーム配信には、主に以下のPC構成要素が重要となります。それぞれの役割を理解することが、適切なPC選びの第一歩です。
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CPU (Central Processing Unit): CPUは「中央演算処理装置」とも呼ばれ、PC全体の計算処理を行う部分です。ゲームを動かす処理と、配信ソフトを使ってゲーム画面をエンコード(圧縮・変換)する処理の両方を担います。ゲームプレイと配信を同時に行うには、高性能なCPUが推奨されます。例えるなら、PC全体の作業を指示・実行する司令塔のような存在です。
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GPU (Graphics Processing Unit): GPUは「画像処理ユニット」とも呼ばれ、画面に映像を表示するための計算を専門に行う部分です。ゲームのグラフィックを滑らかに描画するのに不可欠であり、配信においてはエンコード処理の一部をGPUが担当することもあります。ゲームの画質に大きく影響するため、特に高画質のゲームを配信したい場合に重要です。例えるなら、美しい絵を描く画家のような存在です。
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メモリ (RAM): メモリはPCが一時的にデータを保管しておく場所です。CPUやGPUが処理を行う際に、必要なデータをすぐに取り出せるように待機させておきます。メモリ容量が不足すると、PCの動作が遅くなったり、複数のソフトを同時に起動した際に不安定になったりします。ゲームと配信ソフト、その他のアプリケーションを同時に使用するため、ある程度の容量が必要です。例えるなら、作業机の広さのようなものです。広いほどたくさんの資料を広げて効率的に作業できます。
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ストレージ (SSD/HDD): ストレージはOS、アプリケーション、ゲームデータ、そして録画した配信データなどを長期的に保存しておく場所です。ストレージには主にSSDとHDDがあります。SSDは高速ですが比較的高価で容量が少ない傾向があり、HDDは低速ですが安価で大容量です。OSやゲームの起動速度、データの読み込み速度に大きく影響するため、近年はOSやよく使うアプリケーション、ゲームはSSDにインストールすることが推奨されています。例えるなら、本棚のようなものです。
初心者向けのPCスペック推奨目安
ゲーム配信に必要なPCスペックは、プレイするゲームの種類(どれだけグラフィックがリッチか)や、目指す配信の画質(解像度、フレームレート)によって変動します。ここでは、一般的なPCゲーム配信を想定した、初心者向けの推奨目安を示します。
必要最低限の目安
まずはゲーム配信ができるか試してみたい、という方向けの最低限のラインです。設定を調整すれば配信可能ですが、高画質や最新の重いゲームの配信には不向きです。
- CPU: Intel Core i5 または AMD Ryzen 5 シリーズ(第8世代以降やZen 2以降など、比較的新しい世代)
- GPU: NVIDIA GeForce GTX 1650 または AMD Radeon RX 6400 クラス
- メモリ: 8GB
- ストレージ: SSD 256GB + HDD 1TB (または SSD 512GB)
快適な配信を目指す目安
多くのPCゲームを比較的快適にプレイし、標準的な画質(720p 60fps または 1080p 30fps 程度)で安定した配信を目指す方向けのラインです。迷ったらこのあたりのスペックを目安にすると良いでしょう。
- CPU: Intel Core i7 または AMD Ryzen 7 シリーズ(比較的新しい世代)
- GPU: NVIDIA GeForce RTX 3060 または AMD Radeon RX 6600 クラス
- メモリ: 16GB
- ストレージ: SSD 512GB (OS/アプリ用) + SSD 1TB (ゲーム/録画用) または SSD 1TB + HDD 2TB
高画質・高フレームレート配信を目指す目安
最新の重量級ゲームを高画質でプレイし、1080p 60fpsといった高画質・高フレームレートで配信したい方向けのラインです。より高性能なPCが必要になります。
- CPU: Intel Core i7/i9 または AMD Ryzen 7/9 シリーズ(最新世代)
- GPU: NVIDIA GeForce RTX 3070/4070 以上 または AMD Radeon RX 6700 XT/7700 XT 以上
- メモリ: 32GB
- ストレージ: SSD 1TB 以上 (高速なNVMe SSD推奨) + 大容量ストレージ
PCの種類:デスクトップ vs ノート
ゲーム配信に使用するPCとしては、主にデスクトップPCとノートPCがあります。
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デスクトップPC: 同価格帯であればノートPCよりも高性能なパーツを搭載できる傾向があり、冷却性能も高いため安定した動作が期待できます。また、パーツの交換や増設が容易で、将来的にスペックアップしやすいというメリットがあります。設置場所は固定されます。
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ノートPC: 持ち運びが可能で、場所を選ばずに使用できます。しかし、同価格帯のデスクトップPCと比較すると性能が劣る場合が多く、特に長時間高い負荷がかかるゲーム配信では熱によって性能が低下しやすい(サーマルスロットリング)というデメリットがあります。パーツの交換・増設も難しい場合が多いです。
初めてゲーム配信を始める方で、設置場所を固定できるのであれば、性能と拡張性のバランスに優れたデスクトップPCの方がおすすめです。
既存のPCで配信できるか確認する
現在お持ちのPCでゲーム配信が可能か確認したい場合は、ご自身のPCのスペックを確認し、上記の推奨目安と比較してみてください。
Windowsの場合、以下の手順で基本的なスペックを確認できます。
- 画面左下のWindowsマークを右クリックします。
- 表示されたメニューから「システム」を選択します。
- 「システム」ウィンドウが表示され、「プロセッサ(CPU)」「実装RAM(メモリ容量)」などの項目を確認できます。
- グラフィックボード(GPU)を確認するには、「システム」ウィンドウの左側メニュー、または関連設定から「ディスプレイ」→「ディスプレイの詳細設定」→「ディスプレイ アダプターのプロパティを表示します」と進むことで確認できます。(または、デバイスマネージャーから「ディスプレイアダプター」の項目を確認します)
もしスペックが不足している場合でも、配信ソフト(OBS Studioなど)の設定で解像度やフレームレート、ビットレートを下げることで配信できる可能性もあります。まずは試してみることも一つの方法です。
まとめ
ゲーム配信を始める上で、PCスペックは非常に重要な要素です。CPU、GPU、メモリ、ストレージといった主要なパーツの役割を理解し、ご自身のプレイしたいゲームや目指す配信品質に合わせて適切なスペックのPCを選ぶことが、快適な配信活動の基盤となります。
この記事でご紹介した推奨目安を参考に、失敗しないPC選びを進めていただければ幸いです。適切な機材が揃えば、いよいよ配信の準備へと進むことができます。次のステップとして、配信ソフトの導入や設定について学んでいきましょう。